2007年3月号掲載
なぜ安くしても売れないのか 一人二極化消費の真実
Original Title :Treasure Hunt
著者紹介
概要
消費者のお金の使い方が賢くなるにつれて、市場は「ワンランク上」と「ワンランク下」に二極化しつつある。この二極化する市場では、企業は、単に安く売るだけでは生き残れない。掘り出し物を求め、“宝探し”を楽しむ消費者の心を満足させるものを提供しなければならない ―― 。ベストセラー『なぜ高くても買ってしまうのか』の第2弾。
要約
消費者に何が起きているのか?
ネルソン夫妻はテレビの買い替えを考えていた。2人で量販店を歩き回った結果、欲しい大画面テレビは1500ドル以上もすることがわかった。だが、品質、機能を考えると、お値打ち品に思える。
問題は、3人の子供のチャンネル争いである。2人はさらに売り場を回り、小型テレビを見つけた。たったの57ドルで、性能もよい。
2人は、1999ドルの大画面液晶テレビを1台と、57ドルの小型テレビを子供たちに1台ずつ買うことに決めた。合計金額は2000ドルを超えたが、家族全員が大喜びする買い物だった。
そして数日後、子供たちを集めて言った。予想以上の出費で、しばらくは家計が苦しくなる。だから、余計なものを欲しがらないようにと —— 。
上記の例は、今日の消費者向け商品市場で起きていることを如実に物語っている。
今、世界中で消費者が二極化し、両極の価格帯に支出が集中している。
市場のハイエンド(最高価格帯)では、「ワンランク上」の消費が行われている。つまり、質が高く魅力的で、利益率の高い商品・サービスがプレミアム価格で購入されているのだ。
一方、ローエンド(最低価格帯)では「ワンランク下」の消費が行われ、基本的な品質を備え、流行のデザインも加味した商品が安く買われている。
そしてその中間には、凡庸な商品が無数に並んでいる。それらは際立った魅力もなく、かといって格安品を上回る値打ちも感じさせない。消費者は可能な限り、こうした商品を避けている。
米国のミドルクラスの消費者1万2000人を調査した結果、回答者の93%が「支出を減らし節約に努めているカテゴリーが1つはある」としている。
また、5つ以上のカテゴリーでワンランク下の消費を行っている人も84%いた。最も興味深いのは、57%が「家族のニーズが満たされない限り、自分には金を使わない」としていることだ。