2007年9月号掲載
会社で心を病むということ
著者紹介
概要
会社で心を病む人が増えている。能力至上主義の名の下、自由裁量権は低いまま、仕事量が増えた結果、まじめに働く人が疲れきっているのだ。本書では、精神科産業医の著者がその経験をもとに、こうした会社における心の病を解説。ストレス耐性の個人差や職種ごとのストレス許容度、心を病む部下への接し方等々、メンタルヘルスに関する正しい知識、対策を語る。
要約
増えてきた「現代型」うつ病
会社で心を病む人が年々増加している。
そのためか、「うつ病」という病名が広く知られるようになり、企業もその対策に重い腰を上げるようになってきた。しかし、いまだに「自分には関係がない」と考えるビジネスマンは多い。
この誤った考えがある限り、どのような対策を講じようと、うつ病を予防することはできない。うつ病は、誰もがなる可能性がある病気なのだ。
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最近、うつ病が社会的に認知され、多くの人が気軽に精神科クリニックを訪れるようになった。だが、そのことは困った状況をも生み出している。
それは「現代型」うつ病が多く見られるようになったことである。
この現代型うつ病の特徴は、本人が自分でうつ病だと診断し、精神科クリニックを訪れることだ。
確かに症状だけ見るとうつ状態といえるが、過重労働が原因のうつ病とは明らかに状況が違う。
人格が未成熟で社会性が育っていないために、他人と協調して仕事をすることができない。内省せず、原因を他人のせいにして、挙げ句の果てにうつ病に逃げ込むのである。
例えば、高卒で工場勤務を始めた20代前半の男性の場合、班長になってしばらくすると、会社を休むようになった。通勤電車に乗ると吐き気がするなど、症状は明らかなうつ状態を示していたので、1カ月の休職扱いとなった。
その後、抗うつ剤などの投与で症状が良くなったため、リハビリ出勤をしながら職場復帰した。ところが、2週間目に再びうつの症状が出た。