2007年12月号掲載
「温暖化」がカネになる 環境と経済学のホントの関係
著者紹介
概要
深刻化の一途をたどる地球温暖化問題。だが、地球環境を守ろうという掛け声だけでは、人々はなかなか動かない。そんな中、金儲けという人間の欲望を利用して地球環境を守ろうとする動きが、世界中で活発化している。本書では、温室効果ガスの「排出権」取引の実態やそのプレーヤーを明かしながら、「市場原理導入による地球環境保全」の動きを解き明かす。
要約
「京都議定書」の歴史的意義
2007年2月、衝撃的なニュースが世界を駆け巡った。国連傘下の組織IPCC(気候変動に関する政府間パネル)が、地球の温暖化現象を公式に認め、しかもそれが人類によって引き起こされたものにほぼ間違いないという結論を下したのだ。
これにより、温暖化は人為的な原因によるものなのか、自然変動によるものなのかという論争に、科学的な終止符が打たれた。
IPCCによれば、自然界のCO₂(二酸化炭素)の吸収量は年間31億炭素トンである。一方、人類が化石燃料を燃やすことで排出するCO₂の量は、2000年代に入り72億炭素トンに達している。
つまり、自然界の吸収量の2倍以上という大量のCO₂が放出され、自然界に吸収されなかった温室効果ガスが大気に溜まり続けているのだ。
今、そこにある危機
では、こうした危機に対して、世界はどう動いてきたのか?
地球温暖化への取り組みは20年ほど前から始まっており、1997年には、169の国と地域により「京都議定書」が採択された。
この議定書は、人類が初めて地球温暖化ガスの排出量を減らすことを、不十分な形ながらも合意した、という点で重大な歴史的意義を有する。
不十分である理由の1つは、削減義務を負うべき先進国のうち、米国とオーストラリアが京都議定書から離脱していることだ。
90年の温室効果ガス排出量のうち、先進国が全体に占める割合は70%だった。このことから、先進国が全体として5%の削減を行えば、世界全体でも排出量は抑制できる、というのが京都議定書の基本的な考え方だった。
ところが、米国とオーストラリアが離脱したため、削減義務を負う先進国の排出量は、世界全体の45%を占めるに過ぎなくなった。
さらに、中国・インドなどの削減義務を負わない発展途上国が急速に経済発展を遂げたことから、排出量の総量は大幅に増加している。