2008年2月号掲載
家、三匹の子ぶたが間違っていたこと
著者紹介
概要
マンションの耐震偽装が世間を騒がせて以来、「構造計算」という言葉は、すっかりおなじみのものとなった。ところが、である。実は、日本の2階建て木造住宅のほぼ全てが構造計算されていない! 本書は、この知られざる衝撃的事実を出発点として、真に安全な家とは何かを説き、そして、いつまでも快適に暮らせる「よい家」をつくるにはどうすべきかを提言する。
要約
家についての重大な誤解
「3匹の子ぶた」という有名な童話がある。
子ぶたの3兄弟がそれぞれ「わらの家」「木の家」「レンガの家」をつくる。わらの家と木の家はオオカミに吹き飛ばされてしまうが、レンガの家は襲われても壊れなかった、という話だ。
これを聞いて育った子供は、レンガの家が一番安全だと思うだろう。だが、これは英国の童話だ。
地震がほとんど来ない英国では、地震より風の被害が怖い。風害に備えて家づくりをする国では、重い建物の方が被害を受けにくい。だから、レンガの家だけが助かるのだ。
ところが、地震の被害が深刻な日本では、全く話は別である。地震において一番安全なのは、軽いわらの家である。たとえ壊れても圧死しないからだ。ただし、風に弱いのは同じだ。
2番目は、木の家である。建物自体が軽いので、地震時にかかる力も少なくて済む。
そして、最も危険なのがレンガ積みの家である。一番重い建物なので地震時にかかる力が最大になるし、潰れたら圧死してしまうだろう。
日本では台風も地震も怖い。つまり日本版の3匹の子ぶたの物語では、木の家をつくった子ぶたが賢い選択をしたことになる。
構造計算されていない日本の木の家
とはいえ、日本の木の家については、おそらく日本中のほとんどの人が誤解している極めて重大な事象が存在している。
それは、日本の木造住宅のほとんどが「構造計算」をしていない、すなわち科学的に家の強度を評価していない家である、という事実である。
これまで2階建て木造住宅の97%以上が、構造計算なしに供給されている。そして現在も、2階建て木造住宅については構造計算は義務づけられていない。