2008年9月号掲載
フードバンクという挑戦 貧困と飽食のあいだで
著者紹介
概要
飽食の国、日本では、日々大量の食料が余り、捨てられている。こうした食料のうち、安全に食べられるものを集め、貧困で食物を手に入れられない人々に分配するのが「フードバンク」である。この活動は米国では一般的だが、日本では最近、ようやく注目され始めたところだ。本書では、日本におけるフードバンク活動の「今」を追いつつ、その挑戦の未来を展望する。
要約
なぜ、今フードバンクか
「フードバンク」。あまり馴染みのない言葉である。直訳すれば「食料銀行」だが、食べ物に利息がついたり、貸し借りしたりするわけではない。
預かるのは、まだ十分食べられるのに「売り物にならないから」と捨てられていた食品。大量消費社会の日本ではこれが日々、膨大な量に上る。
それを食品会社などから寄付してもらい、食べ物に困っている人たちに無料で届ける。
受け取る側は食費の節約に、企業にとっては廃棄コストの削減になる。この活動を行う団体、またはシステム、それがフードバンクである。
捨てられる食べ物
フードバンクは、賞味期限が切れている食品は扱わない。その理由について、日本でフードバンク活動を行っているNPO法人「セカンドハーベスト・ジャパン」(2HJ)の理事長、チャールズ・E・マクジルトンさんはこう語る。
「安全で、おいしく食べられる食品しか扱いたくないからです。それに、賞味期限内の食品を引き取るだけでも倉庫が満杯になってしまいます」
2HJは2007年度の1年間に350トンの食料を企業から引き取ったが、その全てが賞味期限が切れていないのに、廃棄されるはずだったものだ。
例えば、ラベルの印字が「少し薄かった」「ずれた」だけの商品。袋につけたキャンペーン応募用のシールがはがしにくいという理由で、レーズン50万袋がやってきたこともあった。
きれい、安全、完璧なものを求めるのは、消費者として当然の心理だろう。だが日本の社会では、その要求があまりにも高すぎるのかもしれない。
フードバンクの仕組み
食品製造業者、小売店、レストランなど、余剰食品は様々な場所で生じる。それをフードバンクが集め、個人ではなく、福祉施設や団体に届ける。
こうした施設では栄養士など、「食」の専門家が働いている場合が多いため、食品を提供する企業が危惧する「不適切な扱い」が起こりにくい。