2008年11月号掲載
情報と技術を管理され続ける日本
著者紹介
概要
著者の山本尚利氏は2003年まで、米国のシンクタンク、SRIインターナショナル(元スタンフォード大学付属研究所)に在籍し、米国の優れた諜報力と卓越した戦略性を目の当たりにしてきた。本書は、そんな氏の経験を基に、米国の対日戦略を分析したもの。米国側の本当の狙いを暴き、有事の際は米国に守ってもらえると信じる、お人好し国家日本に警鐘を鳴らす。
要約
米国覇権主義者に支配される日本
戦後の日米関係における最大の国家課題、それは、日本が敗戦後60年以上経過してなお、戦勝国米国から実質的に完全独立できていないことだ。
それどころか、2001年の小泉政権誕生以来、“米国覇権主義者”の対日支配力は、ますます強化される傾向にある。
米国のジャパンハンドリング法
1991年の湾岸戦争の際、日本政府は1兆3000億円規模の支援金を、実質的には米国主導組織である多国籍軍に拠出させられた。
国内世論は、なぜ日本国民の血税を米国に献上する必要があるのかと猛反発した。それに対し先代ブッシュ政権は、「日本は金だけ出して、自衛隊の派遣を拒否した」などと散々悪態をついた。
03年の第2次イラク戦争では、今度こそ国際貢献しろとブッシュ・ジュニア政権が迫り、イラク特措法とテロ特措法が成立したが、その裏で湾岸戦争とは桁違いの数十兆円規模の対米拠出金が、日本政府による米国債購入の形で献上されていた。
彼らの世論コントロール法はこうだ。
湾岸戦争の時、米国覇権主義者は、「日本は国際貢献しない」と世界に向けて非難することで、1兆3000億円を拠出させた後ろめたさを日本国民に転化した。つまり、極めて狡猾なハラスメント・テクニックが駆使された。
第2次イラク戦争の時は、自衛隊のイラク派遣が憲法違反か否かを国内世論で沸騰させた。そして、その陰でこっそり数十兆円もの国民資産を、イラク戦争の戦費に流用させたのである。
ポスト・イラクのターゲットは日本
03年当時、多くの日本人は、ポスト・イラク戦争時代におけるブッシュ政権の次のターゲットは北朝鮮だろうと予想した。なぜなら、同政権はイラクのフセイン政権と並び、北朝鮮の金正日政権を「悪の枢軸」と宣言していたからだ。
だが、ブッシュ政権にとってイラクと北朝鮮の位置付けは異なる。イラクは石油埋蔵国だが、北朝鮮には主だった資源はない。日本をコントロールするのに利用価値のある国に過ぎない。
米国覇権主義者にとって、極東にターゲットがあるとすれば、それは日本だ。なぜなら、日本は世界最大の米国債の保有国だからである。