2008年12月号掲載
私の第七艦隊
著者紹介
概要
アメリカ海軍「第七艦隊」は、西太平洋からインド洋に至る広大な海域を活動範囲とし、戦後の日本の安全保障に大きく寄与してきた。しかし今、その戦略に大きな変化が起きつつある、と著者・日高義樹氏は指摘。40年以上にわたる同艦隊の取材経験をベースに、戦略変更の背後にあるアメリカの意図を明らかにし、今後の日本の国家防衛のあり方について説く。
要約
第七艦隊に挑む中国
冷戦後、アメリカ海軍は世界の海を4つに分けて、支配体制を作り上げた。
その4つのうち、現在、最も危険であり、動乱が続いているのが、西太平洋から東シナ海、南シナ海、そしてインド洋にわたる広大な海域である。
この重要な海域を担当しているのが、アメリカ海軍第七艦隊だ。原子力空母ジョージ・ワシントンと旗艦ブルーリッジを中心に、9隻のイージス艦隊、7隻の輸送艦隊、そして3隻の攻撃型原子力潜水艦を主戦力としている。
第七艦隊の特徴は、少数精鋭の艦艇が最新鋭の強力な攻撃力を持ち、常時戦闘態勢にあることだ。
そして、第七艦隊はかつての日本帝国海軍の根拠地をそのまま使い、アジア・極東におけるアメリカの支配体制を作り上げている。
その体制のもと、日本は安全と安定を保障され、ぬくぬくと経済的発展を遂げてきた。
しかし、石油不足に象徴される資源戦争の時代、米国民は海軍の世界的な責任について懐疑的になり、新しい艦艇の建造に議会が文句を付け始めている。その結果、アメリカ、特に第七艦隊が日本を守る時代が終わろうとしている ―― 。
中国海軍と米海軍の対決が始まる
今、西太平洋と東シナ海では、中国の艦隊が挑戦的な姿勢を強めている。
例えば2006年暮、西太平洋で空母キティホークが1時間以上も中国潜水艦の追尾を受けた。中国側は、ソーナーを使って空母を攻撃する訓練を行ったのである。
中国の潜水艦の行動についてこれまでアメリカ海軍は、ほとんど何の対策もとってこなかった。
中国海軍を脅威とは考えていなかったからだが、最近、ようやく警戒心を持つようになった。中国軍が新しい戦術ミサイルを開発したからだ。