2009年4月号掲載
現場力復権 現場力を「計画」で終わらせないために
著者紹介
概要
『現場力を鍛える』。2004年に刊行された遠藤功氏のこの著書は、大きな反響を呼び、以来、「現場力強化」に取り組む企業は増えた。だが実情はというと、その多くは計画倒れに終わっている。そこで本書では、強い現場が作られるメカニズムについて改めて考察。現場力の重要性を知りつつも実現できない原因を明かし、その強化に向けた“さらに具体的な方法”を説く。
要約
現場の当事者意識を取り戻せ
日本企業が持つ「現場力」は、独自の優位性の源泉であり、日本の宝である。
与えられたこと、決められたことをこなすだけでなく、現場自らが能動的に改善を行い、問題解決を進めるのは、世界的に見ても類がない。
「バリューセンター」としての現場
日本企業の競争力は、現場を単なるコストとして見てこなかったことから生まれている。
確かに、現場には人がいて設備や原材料があり、一見するとコストのかたまりである。しかし、人には知恵がある。知恵によってコストダウンが図られ、品質が高まり、サービスが改善される。
現場を「コストセンター」ではなく、価値創出の起点である「バリューセンター」と位置づける。そうすることで、現場には当事者意識が芽生える。
「結果を出すのは自分たちなのだ」
そんな自負が、現場発の創意工夫につながる。トヨタがGMを抜き世界一の座を手に入れたのも、まさに現場の高い当事者意識があってこそである。
「自分化」こそ現場力の起点
この当事者意識の高さは、日本企業では「当たり前」のこととして認識されてきた。
しかし、これが当たり前でなくなってしまった企業が増えている。「言われたことしかやらない」という現場が増えているのだ。
現場の当事者意識低下の要因は、様々である。非正社員の増加、協力会社への過度の分業など、現場をコストセンターとみなした施策によって、現場は分断され、一体化とは程遠い状態となった。
内閣府の調査によると、「仕事のやりがいがある」と答えた人の割合は1978年には30%を超えていたが、2005年には17%を切っている。様々な施策で目先のコストは安くなったが、現場の満足度は下がり、当事者意識が薄れていったのだ。