2009年7月号掲載
対話する力 ファシリテーター23の問い
著者紹介
概要
メールの普及によって、生身の人間同士のコミュニケーションが取れない若者。金融危機に対し、どう対処すべきかという議論がないままの日本…。今の我々には、「対話」が欠けている。こう指摘する2人の著者が、対話する力を育むための手法、「ファシリテーション」について語り合った1冊。その本質論から実践する際のコツまでが、わかりやすく説かれている。
要約
全ては「対話」から始まる
米国発の世界金融恐慌によって、株価は暴落し、一流企業の赤字決算が連日新聞を賑わしている。
だが周りを見渡すと、危機感があまり感じられない。ショッピングモールにはそこそこ買い物客が集まり、居酒屋もそれなりに盛り上がっている。
会社を見ても同じだ。「この危機にどう対処すべきか」という話し合いが、全社を挙げてなされている会社がどれほどあるだろうか。
多くの人は、ただ嵐が過ぎるのを待っているように見える。
だが、心の中では誰もが「自分は何をすべきか」と、仕事や組織の意味を問い直しているはずだ。
恐らく我々に今一番欠けているのは、そんな思いを語り合う場だ。皆の問題に皆が関わり、皆で問題解決をしていく。それが、危機から早く脱出するための唯一の方法ではないだろうか。
ファシリテーションとは?
危機的な状況だからこそ話し合う必要があるわけだが、話し合いと一口にいっても、「会話」「対話」「議論」などその中身は異なる。
会話は、2人あるいは少人数で話し合うことだ。
対話は、きちんと向き合って話し合う中で、何か新しいものを一緒に見つけ出していくこと。
議論は、自分の説を述べ合い論じ合うこと。建設的な議論から色々なものが生まれることもあるが、勝ち負けが付随するので、必ずしも全員がハッピーで終われるわけではない。
今、現代社会の様々な危機の解決に向けて、ただの会話よりもきちんと向かい合う対話が、勝ち負けを争う議論よりも、新たなものを共に創り出す対話が求められている。