2011年4月号掲載
なぜリーダーは「失敗」を認められないのか 現実に向き合うための8の教訓
Original Title :Denial
- 著者
- 出版社
- 発行日2011年1月24日
- 定価2,200円
- ページ数362ページ
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著者紹介
概要
企業も人も、自分に都合の悪いものは、しばしば「否認」する。つまり現実を認めない。例えば、自社の市場シェアが低下しても、「一時的な現象だ」とその事実を無視したりする。しかし、こうした態度は「最終的にはほぼ確実に破滅につながる」。こう述べる著者が、否認が原因で危機に陥った有名企業の事例を分析し、否認を避けるための“8つの教訓”を引き出す。
要約
人はなぜ「否認」するのか
世界は今、大恐慌以来最悪の経済危機の只中にある。この危機がいつ、どのように終息するのか、誰にもわからない。
しかし、危機の原因としてこれだけは確かだと言えるものが1つある。それは「否認」、つまり「目の前の現実を認めない」という態度だ。
銀行や不動産業界は、上がった相場は下がることもあるという事実を否認した。住宅ローンで家を買った人々は、借金をして買ったモノにはいつか支払い期限が来るということを否認した。
今日、私たちの周りには否認が溢れている。
2008年3月、ニューヨーク州知事エリオット・スピッツァーは、ホテルに高級娼婦を連れ込んだところを目撃された。
このスキャンダルのために辞任に追い込まれたスピッツァーは、テレビのインタビューで「あんなことをしたらいずれ明るみに出ると、なぜ思わなかったのか?」と聞かれて、こう答えた。
「確かに、見つかったら…ということは頭をよぎりました。でも、明白な事実に向き合いたくないがために、それを無視してしまうことも、人生ではよく起こりませんか?」
否認というものの本質を、これ以上簡潔に述べた言葉はないだろう。明白な事実を無視する。なぜか? 単にそれと向き合いたくないからだ。
否認とは、ある不愉快な現実に対し、「本当ならひどすぎる、だから本当のはずはない」と考える無意識の心の働きだ。
事実に反して「作戦は成功に終わった」と宣言する大統領をはじめ、否認は人間社会にあまねく浸透している。ビジネスの世界も例外ではない。
私は過去40年にわたり経営史を研究してきた。多くの企業や経営者を見ていて痛感するのは「避けられた失敗」がいかに多いか、ということだ。