2009年8月号掲載
自殺する種子 アグロバイオ企業が食を支配する
著者紹介
概要
作物に実った種子の中に毒ができ、子孫を残せないようにする「自殺種子技術」。この技術を施した種子が今、巨大アグロバイオ(農業関連バイオテクノロジー)企業によって実用化されようとしている。その狙いは何か? 我々の想像もつかないことを考え、行う巨大アグロバイオ企業の実態、そして彼らに支配されつつある世界の「食」の現状をリポートする。
要約
穀物高値の時代が始まった
2009年3月現在、穀物価格は、08年秋までの異常高騰時に比べれば大幅に下がった。それは、異常高騰の主犯である投機・投資ファンドマネーが穀物の商品市場から引き上げたからである。
しかし、穀物価格は、これまでの低価格の時代から大幅な上昇傾向に転じたことは明らかだ。
小麦の国際価格は、異常高騰が始まった07年後半から08年を除けば、この10年の最高値にある。大豆、米も同様である。
飢えに直面する人々
こうした食糧価格の暴騰は、途上国を直撃した。
ハイチでは米の値段が前年の1.5~2倍に上昇、市民が暴徒化する騒ぎになった。バングラデシュでは多くの人が1日1食に追い込まれた。
33カ国もの国で、飢えに直面した人々による大規模な抗議行動が起きている。
途上国は押しなべて農業国といえるが、農業国がなぜ飢えるのか? それは世界銀行の「助言」に従い、債務を返済するために自給農業をやめ、専ら先進国向けの換金作物を生産しているからだ。
バナナ、綿花、コーヒーなどを生産し輸出する、穀物は米国やフランスなど先進国からの輸入に依存する、という構造を押し付けられてきた。
その結果、主食を金で買うしかない貧しい国々が、穀物価格高騰の影響を蒙ったのである。
先進国の思惑で押し付けられた、穀物を輸入に依存する構図 ―― これこそ途上国に飢えをもたらした根本原因である。自国の農地で優先的に生産すべきは、そこに住む人々の食料であるべきだ。
世界銀行などが推進してきた国際分業論は、破綻したと見るべきだろう。