2009年11月号掲載
環東京湾構想 新たな成長と人間本来の生き方のために
著者紹介
概要
急速に高齢化が進む日本の中でも、首都圏は特にその進行が速い。また、エネルギーや食糧の自立度も、わが国で最も低い。もはや限界を迎えつつある首都圏を再生させる、そのシナリオとして著者が提唱するのが「環東京湾構想」だ。東京湾を巡る交通網を活性化するとともに、房総半島に新都市を建設するというこの大いなる構想が、首都圏の未来への展望を開く。
要約
首都圏は限界を迎えている!
日本の将来を考える時、最大の問題は少子高齢化だろう。現在の人口は約1億2700万人だが、2055年には9000万人を切る見込みだ。納税の主体となる現役世代の数が減るため、政府の財政は逼迫し、医療や介護に回す財源はなくなる。
一方で医療や介護の需要は、高齢者の増加に伴って増える。55年には、65歳以上の高齢者の占める割合が、今の23%から40%以上にもなる。
日本全体の問題も深刻だが、首都圏はさらに深刻だ。国土交通省によれば、15年の首都圏の高齢者人口は1078万人。05年の761万人から、10年間で320万人増えるという。増加率は10年で42%にも達し、全国平均の31%を大きく上回る。
首都圏の高齢化が全国に比べて際立っているのは、東京近郊に家を買い、働いてきた団塊世代が退職年齢に入ってきたためだ。
推計では、65歳以上の人口に占める要介護高齢者の割合は、05年の16%から、25年には20%になる。これは高齢者のうち、特に健康に問題を抱えやすい75歳以上の人の割合が増えるためだ。65歳以上の高齢者全体の数が急増するのだから、要介護高齢者の数が大きく増えることになる。
こうしたことを考えれば、今後7、8年ほどの間に、首都圏全体で100万人規模の介護施設を新たに増設しなければならない。
しかし、介護施設を造るには、東京は土地の価格が高すぎる。1坪100万円、200万円する土地に施設を建てても採算はとれない。さらに都心部となると、新しい施設のための余地自体がない。
こうした事情もあって、高齢者が人生を無事に終われるようにするための政治と行政の準備は全くなされていない。
また、日本は高度成長期以来、資源や食糧の多くを輸入に頼ってきた。だが、今後は新興国の消費拡大に伴って資源や食糧の価格が高騰し、輸入に頼るのが難しくなる。特に首都圏は食糧やエネルギーの自立度が日本で最も低い。そういう点でも、首都圏は、今のままではもう限界なのである。
日本を再生させる「環東京湾構想」
首都圏が限界を乗り越えるには、少なくとも、次の3つの条件を満たす必要がある。