2010年1月号掲載
異業種競争戦略 ビジネスモデルの破壊と創造
著者紹介
概要
今日、カメラ業界では、ソニーやパナソニックがシェア争いの上位に顔をのぞかせている。銀行業界でも、イオン銀行、セブン銀行など、他業種の企業の参入が進む。このように、業種の異なる企業が1つの市場を奪い合う戦いを、著者は「異業種格闘技」と命名。これから様々な業界に起こるであろう、この異業種格闘技を読み解くためのフレームワークを提示する。
要約
頻発する「異業種格闘技」
今、様々な業界で、これまで競争相手とは考えられなかった相手と戦う局面が増えている。
例えば、カメラ業界を見ると、これまではキヤノンやニコンなど、歴史あるカメラメーカーが業界を構成していた。ところが現在では、ソニーやパナソニックといったエレクトロニクス・メーカーが、シェア争いの上位に顔を連ねる。
また、セブン銀行は、2001年に開業した銀行だが、09年3月期の経常収益(一般企業の売上に相当)は898億円。経常利益は287億円で、経常利益率は32%と、超優良企業だ。
だが、メガバンクの人たちは「セブン銀行は銀行じゃない」と言う。それは、従来の銀行業とは全く違う仕組みで稼いでいるからだ。
お金を預金として預かり、それを資金を必要とするところに貸し付けて利ざやを稼ぐのが、伝統的な銀行業の仕組みだ。これに対し、セブン銀行の利用者の多くはお金をおろすだけだ。
セブン銀行のATMの多くはセブンイレブンやイトーヨーカ堂の店舗内にあり、利用しやすい。そのため、セブン銀行に口座を持つ人よりも、持たない人の方が多く利用する。
そしてこの時、セブン銀行は、ATM利用者が他の銀行のキャッシュカードを使った場合には、その銀行から手数料をもらっている。それが積もり積もって、大変な金額となる。経常収益898億円のうち、ATM手数料は855億円だ。
従って、「セブン銀行は銀行ではない」という言い分も、あながち根拠がないわけではない。
このように、伝統的な業界に全く異質なプレーヤーが入り込んできて市場をかき回すといった例が、実は今、そこかしこで起きている。
こうした現象を、「異業種格闘技」と呼ぶ。その定義は、次の通りである。
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- ①異なる事業構造を持つ企業が
- ②異なるルールで
- ③同じ顧客や市場を奪い合う競争
では、なぜ異業種格闘技が頻発しているのか?