2010年3月号掲載
米中軍事同盟が始まる アメリカはいつまで日本を守るか
著者紹介
概要
日米安全保障条約では、中国は仮想敵国とされている。つまり、軍事的には、米国と中国は対立していることになっている。だが、米国の経済にとって、中国がなくてはならない国となった現在、オバマ政権は中国との関係を急速に深めつつある。今後の米中関係、そして日米関係はどうなるのか。日高義樹氏が、最新の日米、米中の関係を解き明かす。
要約
米中軍事同盟が結ばれる!?
韓国の首都ソウルには、在韓米軍司令部がある。同司令部は韓国駐留の米軍、韓国軍を指揮統制してきたが、2016年7月をもって解体され、米国は朝鮮半島における地上戦闘活動を一切停止する。以後、韓国軍は独立国の軍隊として動き始める。
これにより、米国はアジア大陸での軍事活動に終止符を打つ。朝鮮戦争の終結以来、休戦状態が続いてきた中国との軍事敵対関係が終わるのだ。
中国は米国の敵ではない
日米安保条約では、中国は仮想敵国とされる。「米国は日米安保条約によって日本を守っており、その安保条約が敵としているのは中国である」。日本人は、こう単純に信じている。
だが、冷戦が終わって世界情勢は大きく変わり、米国と中国が敵であるという状態は現実のものではなくなった。米国の陸海軍の首脳や政治家は、口を揃えて「中国は敵ではない」と言う。
米国と中国の軍事対立の中心は、台湾海峡と朝鮮半島である。米国は第2次世界大戦以来、蔣介石の率いる中国の国民党を支持し、軍事的にも支援してきた。その国民党が、毛沢東の率いる中国共産党との戦いに敗れ、台湾に逃げ込んでからは、米国の国家政策として台湾を守ってきた。
ところがオバマ政権が成立して以来、米国の台湾に対する軍事的な援助に翳りが見え始めた。
09年、オバマ政権はブッシュ政権が台湾に約束していたF16戦闘機の売り渡しを中止。また、中国の新鋭戦闘機に対抗するため米国が開発してきたステルス戦闘機F22の生産も中止した。
オバマ政権は、朝鮮半島についても軍事的なコミットメントを減らそうとしている。在韓米軍の戦闘部隊は韓国を離れて大部分が中東に移り、朝鮮半島における米軍の戦力は大幅に減少した。
このように米中関係が大きく変わってきたのは、中国の経済力が拡大し、米国にとって中国の存在がなくてはならないものになっているからだ。
これまでアジアにおける米国の唯一のパートナーは日本で、中国は仮想敵国だった。だが、今や米国は仮想敵国という言葉を使わない。中国との経済的な関係が強まるにつれ、中国とは「対立したくない」という考え方に急速に傾いたのである。
そしてオバマ政権になって、「対立したくない」から「対立してはならない」に変わった。上述のように、中国の協力なしには米国が経済的に立ち行かないからである。