2010年3月号掲載

ノーベル平和賞の虚構

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著者紹介

概要

2009年のノーベル平和賞受賞者は、オバマ米大統領 ―― このニュースが報じられると、各方面から驚きと疑問の声が上がった。と言うのも、彼にはいまだ具体的な実績はないからだ。なぜ彼は選ばれたのか? 本書は、授賞の背後にある政治的意図を暴き出す。さらに、ノーベル平和賞の権威を利用して生み出されつつある巨大ビジネスの実体を明らかにする。

要約

“オバマ受賞”の不思議

 バラク・オバマ大統領のノーベル平和賞受賞が、懐疑の視線にさらされている。

 大統領就任から、まだ1年足らず。「時期尚早ではないか」との批判が湧き上がったのは当然であり、当の本人ですら、「自分が受賞に値するとは信じがたい」と述べているほどである。

 しかしより重要なのは、今回の受賞者選考に対する批判には、単なる時期尚早論にとどまらず、より本質的な疑念が込められているということだ。

 その疑念とは、「ノーベル平和賞の選考プロセスには、政治的判断があからさまに介在しているのではないか」ということである。

 1901年に始まったノーベル賞は、物理学賞、化学賞、生理学・医学賞、文学賞、平和賞、経済学賞の6部門から構成されている。

 このうち、平和賞以外の各部門の選考がスウェーデンの学術機関で行われるのに対し、平和賞の選考は隣国ノルウェーの国会が任命するノルウェー・ノーベル委員会が担う。

 これは1814年から1905年まで、スウェーデンとノルウェーが同君連合(連合王国)を構成していたからだ。

 当時、スウェーデンの支配層はかなり腐敗が進んでいた。そのためアルフレッド・ノーベル氏は、平和賞を選考するのはスウェーデン人よりもノルウェー人が適していると考えたのだ。

 一方、平和賞はというと、選考にあたる委員はたった5人。しかもどんな人物が、誰によって推薦されたのかは50年間にわたって秘密にされる。

 これだけでも、選考基準が「不透明」との声が上がる余地は十分ある。100年前はどうだったか不明だが、ひたすらノルウェー人の良心、公正さを信用するなど、ナンセンスと言わざるを得ない。

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