2010年6月号掲載
「上司が無能」で「部下がバカ」なのには理由がある
著者紹介
概要
北欧からは、H&M、イケアなど世界的な企業がいくつも生まれている。著者によれば、その躍進の秘密は、彼らの祖先「ヴァイキング」を源とする独特のマネジメントにあるという。社員とのコミュニケーションを大切にし、彼らの意見を積極的に取り入れ、権限を委譲する。そんなやり方でチームワークを引き出す北欧流のマネジメントについて解説する。
要約
社員の一体感が消えた日本
バブル崩壊後、日本は急速に国際競争力を失っていった。
そこで、2000年代初頭から、企業は社員のやる気を引き出すための成果主義的人事制度を導入した。だが、そうした改革は成果を生み出せなかったばかりか、上司と部下の関係を悪化させた。
05年に、世界16カ国のビジネスパーソン8万6000人に対して行われた調査によれば、管理職の質について「低い」「非常に低い」と答えた従業員の割合は、日本が40%とワースト1だ。
また、この調査で「転職してもよい」と答えた人の割合は、日本が50%にも達していた。
転職志向が高い米国ですら41%であることからすれば、これまた異様な数値といわざるを得ない。「転職活動中および計画中」の13%を加えると、日本では6割超が転職志向を示している。
日本では、今や多くの人が上司の能力に愛想をつかして、転職したいと考えているのだ。
誤解を恐れずに言えば、日本では昔から、マネージャーとしての上司は無能だった。
上司がいちいち部下の仕事への情熱をかきたてなくても、部下は自らの意思で職務に忠実に働いた。上司は、部下に対して厳しい態度で臨んでいれば、それでうまくいった。
それでもうまくいったのは、上司と部下はもちろん、同じ組織に属する人同士に、目に見えない「絆」があったからだ。従業員同士は、家族といってもいいほど親密な関係を築いてきた。
ところが、私生活でも会社の人間と付き合うことに抵抗を示す人が増えてくるにつれて、そうした構図は少しずつ崩れてきた。
そこに追い打ちをかけたのが、競争を促進する米国型システムの導入だった。