2010年6月号掲載
アメーバ経営 ひとりひとりの社員が主役
著者紹介
概要
高収益を上げ、発展を続ける京セラ。その経営を支えるのは、創業者・稲盛和夫氏が生み出した「アメーバ経営」だ。これは、会社の組織を「アメーバ」と呼ばれる小集団に分け、社内のリーダーにその経営を任せることで、社員1人1人が自主的に経営に参加する“全員参加経営”を実現するものである。このユニークな経営管理手法の全貌を、氏自ら詳述する。
要約
アメーバ経営の3つの目的
企業が健全に発展するためには、誰が見ても正しい「経営哲学」と、それに基づく「経営管理システム」を確立することが不可欠である。
1959年創業の京セラ、84年創業の第二電電(KDDIの前身)。両社は今も発展を続けるが、その経営を支えているのが、確固たる経営哲学と、「アメーバ経営」と呼ばれる、精緻な部門別採算管理をベースとした経営手法だ。
会社の組織を「アメーバ」と呼ばれる独立採算制の小集団に分け、社内のリーダーに運営を任せる ―― 。このアメーバ経営には、次の3つの目的がある。
①市場に直結した部門別採算制度の確立
「売上を最大に、経費を最小にする」ことが経営の原理原則である。
売上や経費は現場で生み出されるものだから、従業員にもこの原則を理解し、実践してもらう必要がある。
だが、組織が大きくなれば、この原則を末端まで徹底しようとしても限界がある。
そこで、会社を小さなユニットに分割し、それが互いに社内で売買する仕組みにした。
例えば、ファインセラミックスの製造工程には、原料、成形、焼成などがある。
この各工程をユニットとして分割し、原料部門が成形部門に原料を売るという形をとれば、各ユニットは1つの中小企業のように売買を行う独立した採算単位となる。
この独立した1つの採算単位を「アメーバ」と呼び、各々にリーダーを置き、経営を任せる。
こうすることで、それぞれが「売上を最大に、経費を最小にする」という経営原則を実感しつつ、自主的に経営していくことができる。