2010年10月号掲載
アメリカの不運、日本の不幸 民意と政権交代が国を滅ぼす
著者紹介
概要
日米両国の衰退について考察した書である。著者は、2009年の政権獲得後、迷走続きの民主党は、1920年代、何の準備もないまま政権を獲得して挫折し、国力を衰えさせた英国の労働党に似ているという。そして、不法移民に悩む米国は、ゲルマン人の侵入で衰退したローマ帝国と共通点があると指摘。“2つの衰退”の実相を明らかにし、事の重大性を訴える。
要約
政権交代が日本を衰退させる
しばらく前から、選挙というと「マニフェスト」という言葉が乱れ飛ぶようになった。
マニフェストとは公約であり、国民はマニフェストを比較検討した上で、投票することになる。
ところが、2009年の衆議院議員選挙において、この原則は全く無視された。圧勝したのは民主党だったが、そのマニフェストに対して、国民はほとんど何の評価も与えなかったのである。
世論調査によると、「子ども手当」には有権者の約半数、「高速道路無料化」には6割以上が反対している。つまり民主党が圧勝したのは、そのマニフェストに国民が賛同したからではないのだ。
そして、民主党のマニフェストのうち、多くの国民が注視しているのが、日米関係だろう。同党は、マニフェストに次のように記した。
「緊密で対等な日米関係を築く」
これまでのような極端な対米追従から脱却するためには、それなりの準備が必要だ。ところが民主党は、何の準備もなしに、こうした危険なマニフェストを掲げてしまったのである。
どこが危険なのか。それは、同盟関係を結ぶ相手に「対等な」関係を強調することは、「現在の関係は対等ではありませんので、大変不満です」と意思表示をしたことに他ならない、という点だ。
それが、大人の外交常識というものである。
アメリカはすでに日本を見限っている
民主党政権はこのマニフェストの下に、米軍普天間基地移設問題を白紙に戻そうとした。
この対応で、オバマ大統領、ひいては米国民までもが、民主党政権への信頼を完全に失った。