2010年10月号掲載
スイッチ! 「変われない」を変える方法
Original Title :SWITCH:How to Change Things When Change Is Hard (2010年刊)
著者紹介
概要
人が、変化を起こすのは難しい。その原因は、「理性」と「感情」のせめぎ合いにある。ダイエットであれば、理性では「食べ過ぎはダメ」とわかりながら、「もっと食べたい」という感情が勝ち、結局食べ過ぎるといった具合だ。だが、少しの工夫で変化は容易に起こせる。本書では、理性と感情をうまく制御して個人や組織を変えた例を挙げ、変化するためのコツを示す。
要約
変化を生み出す3つの事実
「クロッキー」という、マサチューセッツ工科大学の学生が発明した目覚まし時計がある。
この時計には車輪がついていて、朝にアラームが鳴ると部屋中を駆け回る。従って、二度寝する心配がない。
この時計はほとんど広告を打たなかったが、発売から2年で約3万5000台を売り上げた ―― 。
「象」と「象使い」
この発明の成功から、私たち人間は“二重人格”だということがわかる。
一方の自分(理性)は、朝早く起きたがっている。しかし、もう一方の自分(感情)は、あと何分か眠りたいと感じているのだ。
この2つの葛藤をうまく表現したのは、心理学者ジョナサン・ハイトだ。ハイトは、私たちの感情は「象」であり、理性は「象使い」だと言う。
象にまたがって手綱をつかむ象使いは、一見リーダーに見える。だが、巨大な象をコントロールするのは難しい。
ほとんどの人は、象使いが象に屈する場面に心当たりがあるだろう。例えば、食べすぎたり、仕事を先延ばしにしたり、禁煙に失敗したり…。
象、つまり感情や本能の弱点は明らかだ。怠け者で、長期的な報酬(やせること)より、短期的な報酬(アイスクリーム)に目を奪われてしまう。変化がうまくいかないのは、たいてい象のせいだ。
目の前の満足を求める象の欲求は、象使いの強みとは正反対だ。象使いの強みとは、長期的に考え、計画を練ることで、いずれも象は苦手だ。
しかし、象はいつも悪役というわけではない。象の取り柄は愛、思いやり等々、豊かな感情だ。