2011年2月号掲載
生命の暗号 あなたの遺伝子が目覚めるとき
著者紹介
概要
生命科学が進歩し、遺伝子に関して様々なことがわかってきた。研究によると、人間の遺伝子で実際にはたらいているのは5~10%で、それ以外は眠ったままの状態だという。これは裏返せば、人間の可能性は無限だということ。このように指摘するバイオテクノロジーの世界的権威が、“遺伝子ON”の生き方 ―― 無限大の可能性を開花させるための生き方を説く。
要約
遺伝子が目覚める時
科学は今、日進月歩の勢いで進んでおり、生命科学の分野でも同じことがいえる。その中でも最近、話題になっているのが「遺伝子」である。
遺伝子のはたらきは環境や刺激で変化する
数十年前までは、「遺伝」といえば「それは遺伝だから仕方ないよ」などと、親の代から受け継がれた宿命的なものとして、比喩的に捉えられるくらいであった。
例えば、優秀な音楽家を両親に持った子供は音楽的才能に恵まれる。糖尿病の家系に生まれると高い確率で糖尿病になる…。これらのことは一種の宿命とか運命として受け取られがちだ。
しかし、最近の遺伝子研究から、すごいことがわかってきた。
「遺伝子のはたらきは、それを取り巻く環境や外からの刺激によっても変わってくる」ということである。正確にいえば、それまで眠っていた遺伝子が目を覚ます、ということだ。
遺伝子には生命に関する全情報が入っている
遺伝子の話を理解するためには、まず、細胞と遺伝子の関係を理解する必要がある。
私たちの体は、膨大な数の細胞からできている。体重60kgの人で約60兆個。すごい数だが、もっとすごいのは、この細胞の1個1個に、例外を除いて全て同じ遺伝子が組み込まれていることだ。
例えば、髪の毛と爪と皮膚。この3つは見た目はずいぶん違うが、全部細胞と呼ばれるもので、構造やはたらきは基本的に同じ。そして、その細胞のはたらきを決めている遺伝子も全く同じだ。
遺伝子は細胞の核の中にあり、ここにDNA(デオキシリボ核酸)という物質がある。この物質こそ、私たちが遺伝子と呼ぶものだ。
DNAは螺旋状の2本のテープになっていて、そのテープ上に4つの化学の文字で表される情報が書かれている。これが遺伝情報で、そこには生命に関する全情報が入っていると考えられている。
ヒトの細胞1個の核に含まれる遺伝子の基本情報は、30億の化学の文字で書かれている。そして、私たちはこのDNAに書き込まれた膨大な情報によって生きているのである。