2020年11月号掲載
LIFESPAN 老いなき世界
Original Title :Lifespan
- 著者
- 出版社
- 発行日2020年9月29日
- 定価2,640円
- ページ数589ページ
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著者紹介
概要
人生の晩年を、老いからくる病気や身体の不自由に苦しみながら過ごす人は多い。だが、遺伝学の世界的権威である著者によれば、老化という「病」は治療可能である。しかも、その実現は近いというのだ。本書では、最先端の研究成果をもとに、老化のメカニズムや「長寿遺伝子」の存在を解明し、老いなき世界の姿を描きだす。
要約
老化と長寿に関する研究成果
人類は、かつてないほど長生きをするようになった。だが、より良く生きるようになったかといえば、そうとはいえない。むしろ正反対だ。人生最後の数十年はどういうものか。人工呼吸器や様々な薬、手術…。人は時間をかけて苦しみながら死んでいく。私たちは次々と病気に見舞われながら晩年を過ごすことが普通だと思っている。
だが、健康でいられる時期をもっと長くできるとしたらどうだろうか。
実は、長く元気でいられるようになる時代は近づいている。単に寿命が延びるだけでなく、健康で生き生きと暮らせる時代だ。それは思っている以上に早く到来しつつある。22世紀が始まる頃に122歳で亡くなる人がいたら、長生きしたとはみなされなくなっている可能性がある ―― 。
生体内の2種類の情報
老化とは何か? 単純にいえば、それは情報の喪失に他ならない。
生体内には2種類の情報があり、それぞれ異なる方式で符号化されている。
1つ目は、デジタルな情報だ。デジタル情報は、取り得る値が決まっている。ただしこの場合は、0か1かの2択ではなく、4つのうち1つの4択だ。具体的には、DNAを構成する基本単位の塩基部分にあたる、アデニン、グアニン、シトシン、チミンのいずれかである。DNAはデジタル方式なので、情報の保存やコピーを確実に行える。
2つ目は、アナログ情報だ。今日、このアナログ情報は「エピゲノム」と総称される。これは、親から子へと受け継がれる特徴のうち、DNAの文字配列そのものが関わっていないものを指す。
ヒトの新生児はたった1個の受精卵から出発して、約260億個の細胞を持つに至る。また、細胞1個1個にはすべて同じ遺伝情報が格納されているのに、各細胞は何百種類もの異なる役割へと分化する。いずれの場合も、そのプロセス全体を調整しているのがエピゲノムだ。
このエピゲノムはアナログ情報であり、時間とともに劣化する。
劣化した情報の回復
私たちは“古いDVDプレイヤー”のようなものだ。私はそう考えている。DVDが欠けてしまえば、その再生は不可能だ。しかし、DVDの表面にひっかき傷がついただけなら、情報を回復できる。
それと同様のプロセスを用いれば、若返りも可能だ。私たちの細胞は若い頃のデジタル情報を高齢になっても保持している。若返るためには、傷を取り除く研磨剤を見つけさえすればいい。