2011年3月号掲載
新たなる成長と競争のルール 成熟期のウェブ戦略
著者紹介
概要
急成長を遂げてきたウェブビジネスも、近年、その成長が緩やかになりつつある。つまり、「成熟期」を迎えつつある。この時期は、以前の“未開”の時代に比べ、チャンスは見つけづらい。だがその一方、すでにある仕組みや市場を上手に活かせば、大成功することも可能だ。本書は、この「一見やり尽くされたように見える」成熟期における戦略について考察する。
要約
瞬く間に成熟する世界
今、日本のウェブビジネスは大きな転機を迎えている。それは、「成長」から「成熟」というステージへの移り変わりという転機である。
近年の国内ウェブ市場を俯瞰すると、これまでと同様に爆発的に伸びている分野や全く新しい技術・サービスの登場が見られる一方、その成長に陰りが見え始めている分野も現れてきている。
例えば、インターネット証券主要5社における口座数は、2004~05年頃に各社とも前年比で50~100%増の急拡大を遂げた後、07年以降は10%前後の伸び率にまで鈍化している。
一時期は多くのユーザーを獲得したポータルサイトやメールマガジンの中には、経営的に行き詰まる企業も見られるようになった。
これらは「ウェブ成熟期」の到来を示すものであり、この成熟期については、転機として改めて考える必要がある。
なぜなら、ウェブビジネスの成功要因や個人の消費行動が、これまでとは異なってきている可能性があるからだ。もしそうであるとしたら、私たちは頭の中身をいち早く切り替える必要がある。
GROUPONの疾走
例えば「史上最速で成長する企業」と称された、「GROUPON(グルーポン)」という企業がある。
GROUPONは08年にシカゴで産声を上げ、2年ほどでその企業価値は13.5億ドルと評されるまでに至った。すでに世界20カ国以上で1000万を超すユーザーを獲得し、今も事業を拡大している。
同社のビジネスモデルは、シンプルだ。
飲食店などが発行する割引クーポンを、ウェブで複数のユーザーに共同購入してもらうことがサービスの基本となる。ただしGROUPONでは、
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- ・多くのクーポンの値引率が50~90%と、かなりのインパクトがある
- ・しかし、ある一定数の購入者が制限時間内に集まらない限り取引が成立しない
- ・従って、そのクーポンを購入したいユーザーはTwitterやSNSを通じ口コミで他の購入者を集めようとする
という形で、瞬く間に利用者をかき集める優れたインセンティブが施されている。