2011年4月号掲載
世界を変える、クール・ソリューション 低炭素社会の新しい競争と選択
著者紹介
概要
近年、日本では低炭素社会を実現するための手段として電気自動車、太陽光発電、スマートグリッド等が注目されている。だが著者は、各国の資源覇権戦略、コストなどを考えると、これら新規の技術だけに頼るのは危険だと指摘。内燃機関、コージェネ(熱電併給)等、今も有効な古い技術に光を当て、資源の乏しい日本にとっての“ベストソリューション”を導き出す。
要約
クール・ソリューションが日本を救う
電気自動車、太陽電池、スマートグリッド…。低炭素社会の実現に向け、新たに登場したこれらの「解決策」は、マスコミが頻繁に取り上げ、注目を集めている。
こうした解決策を私は「ホット・ソリューション」と呼ぶ。ホットには「熱い」の他、「激しい、興奮した、最新の」といった意味があるからだ。
このホット・ソリューションに対し、過去の解決策として見られがちだが、確実に進歩している技術がある。例えば、ディーゼル車や天然ガス車などの内燃機関の車や、コージェネレーション(熱電併給)がそうだ。こうした解決策は「クール・ソリューション」と呼べるだろう。
私は、あえてクール・ソリューションに光を当てたい。それは、今世界で進行している2つの大きな事態を考える時、ホット・ソリューションだけを万能であるかのように考えて進んでいくのは、日本の将来にとってあまりに危険だと思うからだ。
世界を変える、新たなエネルギー革命
世界で起きている大きな事態。その1つ目は、これまで採掘が難しかった「シェールガス」と呼ばれる天然ガスの採掘技術が確立したことである。
シェールガスは在来型の天然ガスよりも深部に存在するため、これまで経済的に採掘することができなかった。ところが、最近になって採掘技術が高度化したことで、商業化への道が拓けたのだ。
米国では、2007年には年間340億m³だったシェールガス産出量が09年には900億m³へと急増。数年前まで、あと6~7年で米国の天然ガスは枯渇するといわれていた。だが今では、国内需要の90~100年分以上のガス資源があるとされるなど、ガス輸出国になる可能性も出てきたのだ。
こうした急激な変化が起こった結果、米国の天然ガス価格相場は急落した。
いずれ、世界最大のガス輸入国になると見られていた米国の市場が消滅したことの影響は大きい。
そのあおりを受け、ロシアは天然ガスを売ることで得られる莫大な利益を失うことになる。
その一方で、EUには強い味方が出てきた。ポーランドに米国並みのシェールガスがある可能性が出てきたのだ。埋蔵量は、最大でポーランドの国内消費量の300年分にもなるといわれている。