2011年6月号掲載
がんの練習帳
著者紹介
概要
がんは怖い。それゆえ、正面から見つめようとしない人は、結構いるのでは。だが、今や日本人の2人に1人はがんになる時代。がんを人生の設計図に織り込んでおく必要がある。予防法、告知を受ける際の心構え、治療法選びのコツ、費用等々、基本事項を本書で一通り「練習」しておけば、がんになっても慌てずに済む。怖いのは、がんではなく、がんを知らないことだ。
要約
本当にがんを知っているか?
日本人のおよそ2人に1人が、がんになり、3人に1人が、がんで亡くなっている。65歳以上に限れば、2人に1人が、がんで死亡している。
この割合は世界一高く、日本は「がん大国」といえる。しかし日本人は、がんのことを知ろうとしない。「がんは他人事、自分とは関係がない」と思いたいのだ。
その一方、そうした人はがんだと告知されると、頭が真っ白になったまま不本意な治療を受けて後悔する、ということになりがちだ。実際にがんと言われた時、慌てないためにも、がんになる前に、がんを知る「練習」が必要である。
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では、そもそも、がんとは一体何者か。
一言でいえば、がんは遺伝子の本体であるDNAのコピーミスで起こるものである。
私たちの体は、60兆個の細胞からできている。そして皮膚の細胞が垢になるなど、毎日、8000億もの細胞が死に、死んだ細胞の数だけ、新しい細胞が「細胞分裂」の形で生まれている。
細胞分裂では、細胞の設計図であるDNAをコピーすることが一番大事になる。だが、DNAのコピーの際にミスをすることがある。
DNAを正確にコピーできなかった細胞は、「出来損ない」であって、まずは生きていけない。
しかしごく稀に、コピーミスの結果、「スーパー細胞」が生まれることがある。その特徴は「死なない」ということだ。
この「死なない細胞」こそ、がん細胞である。最近の研究では、がん細胞は健康な人の体でも1日に5000個も発生することがわかっている。