2011年9月号掲載
企業再生 7つの鉄則 成功事例に学ぶ危機からの脱出戦略
著者紹介
概要
グローバル競争、そしてビジネス環境の急速な変化に伴い、今後、経営の悪化に苦しむ企業が増えると思われる。では、経営不振に陥った企業は、どうすれば健全な企業に生まれ変わることができるのか。その具体策を提示するのが本書だ。世界最大の企業再生専門ファームのプロが、日米の業績不振企業の分析を基に、企業再生のための“7つの鉄則”を解き明かす。
要約
経営危機の原因と再生の成功事例
今後の日本経済を見通すと、人口減少などにより国内経済の低迷が続く可能性が高い。それに伴い、多くの企業の経営が悪化すると思われる。
なぜ企業は危機に陥るのか
企業が経営危機に陥る理由は、それぞれが置かれた状況により異なっているように見える。
しかし、経営危機に至るサイクルは共通している。それは、次のようなものだ。
- ・企業を取り巻く環境の変化が起こる
- ・戦略の修正ができない
- ・企業全体として環境変化への対応ができない
- ・社員も改革に協力しようとしない
- ・変化した環境に合わないビジネスモデルが残り、コスト構造が悪化する
- ・バランスシートに不良資産がたまっていく
- ・資金繰りが悪化し、経営危機に陥る
このような悪魔のサイクルに陥らないことが重要である。そのために、まず経営危機の原因を十分に理解することが必要である。
経営危機から復活した企業
経営危機に陥ったものの、再生を成功裏に成し遂げて、その後、最高益を更新した企業がある。
例えば、吉野家、京セラミタ(旧・三田工業)、伊藤忠商事、日産自動車、JFEスチール、日本電産サンキョー(旧・三協精機)などがそうだ。
これらの事例を分析すると、いくつかの共通する成功要因が浮かび上がってくる。
例えば、吉野家は1970年代後半から急激な店舗の拡大を図り、当時、米国産牛肉の調達が難しかったことから、味の落ちるフリーズドライ肉の使用を始めた。にもかかわらず、その直後に値上げをして顧客離れを招き、80年に倒産した。
しかし、その後の再建スピードは速く、倒産から7年間という短期間で債務を100%弁済した。
吉野家は、なぜ短期間で再生に成功したのか。
再建にあたり、吉野家は会社更生法を申請し、管財人には弁護士の増岡章三らが就任した。