2012年3月号掲載
勝ち続ける経営 日本マクドナルド原田泳幸の経営改革論
著者紹介
概要
著者の原田泳幸氏は、2004年、アップル社の日本法人の社長から日本マクドナルドのCEOに転じ、低迷する同社を徹底した改革でV字成長に導いた。本書は、その7年間の経営改革について語ったもの。「コストを減らすとは、投資をすること」「コモディティかつ独自性のある商品が成功する」等々、改革の根幹にある著者のビジネス理念もたっぷりと披露される。
要約
基本に立ち返れ
2004年に私がマクドナルドに転職した時、日本マクドナルドは大変厳しい経営状態にあった。
それまで1997年から7年連続で前年対比既存店売上高マイナスという状況が続いており、2002~03年は赤字決算だった。
入社してすぐ、私は全社員を集め、こう伝えた。
「今から新しいバスが出発する。新しいバスのチケットを買いたい人は買え。買いたくない人はバスに乗らなくてかまわない」
強烈な変化のスタートをしたわけだ。そのためバスに乗らず、会社を去った人はたくさんいた。
低迷の原因は基本を忘れていたから
当時、管理職・執行役員は低迷している状況について、「多店舗展開が急速に進み、店舗がお互いに客を奪い合った結果」と説明した。
しかし、原因はもっと単純だった。私が分析したところ、原因は「QSC」という基本中の基本ができていなかったことだった。
外食産業の基本は、「QSC」である。それにVを加えて、「QSC&V」ともいう。つまり、「QUALITY(質)、SERVICE、CLEANLINESS(清潔感)、VALUE(お得感・価値)」の4点だ。
低迷期のマクドナルドは、このQSC&Vを犠牲にしていたのである。
どういうことかというと、レストランビジネスでは、人材がいて初めて店を開ける。店を開いてから人材を育てたのでは良いサービスはできない。
だが、低迷期は人が育たないのに、店をどんどん増やしてしまった。人材の育成よりも、店舗拡大を優先してしまったのである。