2013年4月号掲載
JAL再生 高収益企業への転換
概要
2010年1月、JALは2兆円以上もの負債を抱えて破綻、会社更生手続きを申請した。会社更生手続きを採用しても再建できなかった企業は数多い。だが、同社は申請からわずか2年8カ月という、過去最短の記録で再上場を果たす。いかにして、誰もが驚くようなV字回復を成し遂げたのか。稲盛和夫名誉会長はじめ多くの関係者への取材を基に、JAL復活の秘密を探る。
要約
JALが抱えていた6つの課題
JALは、2010年1月19日に経営破綻した。だが、破綻後、わずか2年8カ月で東京証券取引所に再上場を果たした。
長きにわたり経営を立て直すことができなかったJALを、なぜこのような短期間で再建することができたのか。
その前提として、法的整理である「会社更生手続き」を採用できたことがある。金融機関に対しては債権放棄の同意が得られ、大幅な人員削減や不採算路線からの撤退といった経営課題を一気に片づけることができた。
しかし、これだけでは十分に説明できない。会社更生手続きを採用しても、再建できなかった企業は数多くある。また、会社更生手続き申請から上場まで2年8カ月での再建は、ある種の奇跡だ。
稲盛和夫名誉会長をはじめとするJALの経営幹部、中堅幹部および現場の社員の方々延べ約50名に取材を行い、その謎に迫った。
取材を進めていくうちに、破綻という結果に結びつく要因ともなっていった様々な組織の問題が、実はJAL特有の問題ではないことに気づいた。それは、多くの日本企業に共通する課題だった。
そこで、各社に共通する課題から、次の6つの基本的な経営課題を抽出した。
それらは、次の「経営基盤」に関わる3つの課題と、「現場」に関わる3つの課題とに分けることができる。
・経営基盤の課題
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- ①価値観の共有ができていない
- ②現場の経営参画意識が乏しい
- ③経営と現場に距離感がある
・現場の課題
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- ①顧客視点に立っていない
- ②現場のリーダーシップの不在
- ③横のリーダーシップの不在
JALがどのようにして、これらの課題を克服し、再生に結びつけていったのか。その過程を知ることこそが、驚異のV字回復の謎を解くカギとなる。
管理者ではなく、リーダーであれ
破綻後、会長に就任した稲盛氏が最初に手をつけたのは、社員の意識改革である。