2011年12月号掲載
京都の企業はなぜ独創的で業績がいいのか
著者紹介
概要
観光都市として知られる京都は、その一方で、世界的に評価の高い企業がひしめく都市でもある。京セラ、島津製作所、村田製作所、ローム、オムロン、日本電産…。京都に本拠を置くこれらの企業は、深刻な不況の中にあっても、着実に業績を伸ばしている。その秘訣は何か? 京都を代表する企業の1つ、堀場製作所の経営者が、「京都式経営」の真髄について語る。
要約
不況時こそ京都式経営
今、日本ではデフレで内需が減少し、円高で輸出も減退して、製造業の経営環境が急激に悪化している。その中にあって、京都の企業は高収益を生み出すことに成功している。
なぜ、京都企業は高収益を上げられるのか?
それは、京都企業の生み出すものが独創的な製品であり、各々の市場で優位を保っているからだ。
箱庭的企業環境が育てる独創性
「自らのビジネスにおいては独創性を重視する」 ―― これは、業種が違っても、どの京都企業にも共通している特色である。
では、なぜ京都企業は独創性を目指すのか。
最大の理由として、他都市と比べ、京都の企業環境が厳しいことが挙げられる。京都は市場規模が小さく、また、四方を山に囲まれているため土地が限られており、大工場を作ることができない。
つまり京都は、小さな工場で多品種少量生産を行って付加価値の高い製品を生み出さねばならないという、厳しい環境に置かれているのだ。
にもかかわらず、陶磁器や織物、染色品など、様々な伝統産業が数百年間も存続している。
この背景には、各々の企業が独自性を打ち出し、企業間の棲み分けを程よく行ってきた歴史がある。こうした特性があったから、箱庭的な京都でも、多くの分野でユニークな企業が存在し得たのだ。
そして、この箱庭的環境を支えているのが、業種を横断した横のネットワーク。京都には、あらゆる分野の職人による異業種交流の歴史がある。
例えば、西陣織の職人も友禅染の職人も、茶道の家元も華道の家元もいる。様々なジャンルの人たちが「ちょっと聞きたいことがある」と、気軽に情報交換を行うことができる。そして、異業種交流を通じて互いを刺激し、切磋琢磨している。