2012年2月号掲載
エスケープ・ベロシティ キャズムを埋める成長戦略
Original Title :ESCAPE VELOCITY
著者紹介
概要
グローバリゼーションが進む中、企業は従来の戦略を大胆に練り直さなければならないことも多い。だが、社内にはびこる過去のしがらみが、企業の大きな方向転換を阻む。本書は、そのしがらみを脱し、真に革新的な戦略を立案する方法を伝授する。
要約
「過去の引力」の恐ろしさ
21世紀において、大きな成長の機会は先進国ではなく、発展途上国の経済にある。今後、世界人口は13億人増えるが、そのうち先進国に相当する分は9000万人にすぎないのだ。
これは、今日のグローバル企業が「アウェイ」の試合で戦う新しい能力を身につけなければならないことを意味する。つまり、従来のビジョンや戦略を最初から練り直す必要がある。
どの市場が最も魅力的なのか、その市場を活用するために経営資源をどう再配分すればよいのか、次世代の製品は誰をターゲットとしたものになるのか…。これらは、まさに悩ましいという他はない問題だ。
だが、もっと重要な問題は、将来に向かう懸命な努力に抵抗する力が、自社の中に存在することだ。この抵抗力とは、前年度の経営計画である。それは、「過去の引力」といえるようなものだ。
過去の延長線上にある事業計画から離れようとする投資に対して、前年度の計画がとてつもない引力を及ぼし、新たな投資の邪魔をするのである。
通常、翌年度の経営資源の配分と業績目標のたたき台として、前年度の事業計画の資料が配布される。そして、経営陣が全事業部に対し、翌年の計画の草案をボトムアップ方式で作るよう要求し、それと同時にトップダウンの目標を作成する。
これは、標準的なやり方である。ただし、それは市場の千載一遇の変化が生じるまでの話だ。
千載一遇の変化とは、新たな市場カテゴリーや新たな顧客群が生まれる際に生じる「一度限り」の市場の拡大を意味する。ここでへまをすれば、莫大な成長機会を失い、チャンスは二度とない。
要するに、千載一遇の成長の機会を逸することは最悪である。しかし、多くの企業がそのような最悪の行為を行っている。
コダック、ポラロイド、コンパックに起きたこと、GM、フォードに起きたこと、イースタン航空、ウエスタン航空に起きたことが、自社でも起こりつつあるかもしれないと認識すべきだ。