2024年2月号掲載
戦略の要諦
Original Title :The Crux:How Leaders Become Strategists (2022年刊)
- 著者
- 出版社
- 発行日2023年11月24日
- 定価2,420円
- ページ数525ページ
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著者紹介
概要
“戦略の戦略家”と称される著者いわく、「戦略の策定とは意思決定でも目標設定でもない。長期的ビジョンも要らない」。それは、克服可能な最重要ポイントを見極め、解決法を見つけることだと述べ、その手順を論じる。多彩な事例を引きつつ、戦略についての経営陣の誤解を解きほぐし、すべきことを説いた500頁超の大著である。
要約
戦略と最重要ポイント
戦略とは、組織の重大かつ困難な課題を解決するために設計された「方針と行動計画の組み合わせ」を意味する。
戦略は問題解決の一種だ。従って、今何が問題なのかを理解しなければならない。すなわち戦略は、組織が直面する課題を特定するところから始まる。直面する状況の理解が深まるにつれて、現実的に解決可能な“最重要ポイント”が見えてくる。そこに至るために行うこととは、例えば ――
野心や価値観を選別する
効果的な戦略は、直面する課題を洗い出し、さらにリソースの制約や競争状況を考慮し、そこに“野心”が加味されるところから生まれる。
とはいえ、野心には慎重な吟味が必要だ。有能なリーダーは組織が直面している状況をじっくり見つめ、多くの野心のうちいくつかをふるい落とす。つまり野心に絶対的な優位性はなく、前に進むためには野心や価値観を選別する必要がある。
それに、ある状況で抱いた野心が所与の条件にふさわしいとは限らない。GE(ゼネラル・エレクトリック)は2015年に、「5年以内にソフトウェアでトップテンに入る」という戦略を掲げたが、現在では巨額の資金を注ぎ込んだGEデジタルは大失敗だったと見なされている。
“勝負の分かれ目”を見抜く
戦略を立てるとは、単に目標を掲げることでもなければ、決定を下すことでもない。
チェスの駒を1回動かすごとに勝利の確率がどう変化するかがすぐにわかるなら、ゲームを進めるのは容易だろう。だが実際には、「こうすればこうなる」とわかっているわけではない。いくつもの定石を覚えておき、どこが勝負どころかを見極めながら進む。相手の弱点とおぼしきところを突いて一気に勝利に近づける“勝負の分かれ目”はどこか、そこを見抜くことが決め手となる。
他の人が見落としていたことを見抜く
洞察力を備えた戦略家は、他の人が見落としていたことを見抜く。おそらくは何かが一瞬ひらめくのだろう。例えば、アマゾンのジェフ・ベゾスは1994年に、インターネットは紙の本を売るのに理想的な媒体だと気づいた。
こうしたひらめきは、得ようと思って得られるものではない。それでもいくつか手立てはある。
まず、問題の原因をわかっていない時には、解決策がひらめくことは期待できない。視点を変える練習を積み、状況を裏から見たり、斜めから見たりするとひらめきが得やすくなる。また、最重要ポイントにフォーカスすることの重要性を理解しているとひらめきは生まれやすい。
アイデアを生み出す方法として、ブレインストーミングや瞑想など、様々なやり方が提案されてきた。だが思うに一番まっとうなのは、「難しいと感じたところ」を「とことん考える」ことだ。課題を注意深く診断し、その構造を徹底的に分析し、最重要ポイントをとことん考えるのである。