2012年4月号掲載
教科書やニュースではわからない 最もリアルなアメリカ入門
著者紹介
概要
唯一の超大国として世界を仕切るアメリカ。日本に対しては、通商問題での要求をエスカレートさせている。しかし、元キャリア外交官の著者によれば、強気に振る舞う同国も、実は様々な要素の中で揺れ動いている。そんな「本当のアメリカ」を、歴史的な側面をはじめ様々な角度から解明するとともに、この国がひそかに描く、日本にとって驚愕のシナリオを明かす。
要約
今のアメリカを作ったもの
世界唯一の超大国、アメリカ。この国は、どのようにして形作られてきたのだろうか。
インディアンは略奪される運命だったのか
アメリカは、「西へ、西へ」と開拓を進めることで発展してきた。
19世紀後半まで行われた西部開拓は、その後のアメリカに様々な「遺産」を残したが、中でも最も強い影響を後世に残したものがある。
「マニフェスト・デスティニー(manifest destiny/明白なる運命)」というスローガンだ。これは、白人入植者による植民地拡大は神の与えた運命である、とする概念である。
西部開拓は多くの犠牲を伴った。それは開拓者である白人たちの犠牲だけではなかった。彼らに酷使された黒人たち、殺されていったアメリカン・インディアンたちこそ、その犠牲者だった。
しかし、白人たちは言った。「全ては啓蒙のため、文明開化のためだ。こうなることは明白なる運命なのだ」と。
投資銀行は西部開拓ビジネスで生まれたのか
もう1つ、重大な「遺産」がある。
1869年に全通したアメリカ横断鉄道は、「鉄道債」を発行することで資金を集め、建設された。
延伸されればされるほど、沿線の地域が発展していくので、これほど安定的で儲かるものはない。
そこで、この鉄道債を大量に売りさばくブローカーが大勢現れた。実はこのようにして始まったのが、アメリカにおける投資銀行なのだ。
アメリカの投資銀行のルーツは、実は市場が日増しに拡大することを前提とした「西部開拓ビジネス」にあり、このことが色濃く刻印されたビジネス・モデルが、同国では築かれていくのである。