2012年5月号掲載
雇用創造革命 ひきこもりも知的障がいも戦力にする執念の経営
著者紹介
概要
著者の渡邉氏が経営する(株)アイエスエフネットは、障がい者、引きこもりなどの「就労弱者」の雇用に積極的に取り組む。2010年には、20年までに1000名の障がい者を雇用すると宣言した。「事業を通して社会に役立って初めて経営者として一人前」。このように語る氏が、自社の取り組みを紹介しつつ、社会のあるべき姿、企業の責任など、その思いを綴る。
要約
全ては、障がい者雇用から始まった
2000年1月、私はITネットワーク・エンジニアの育成・派遣を行う株式会社アイエスエフネットを創業した。10坪のガレージオフィスに従業員は4名。全てはここから始まった。
雇用創出宣言
私は創業以来ずっと、働く環境を求めている様々な人の「雇用創造」に取り組んできた。
2010年2月には、ニート・フリーター、ワーキングプア、障がい者、シニア、引きこもりの人々を採用する「5大採用」を実現した。
その後、この方針は「20大雇用」へと、その枠組みを拡大している。
20大雇用とは、5大採用の該当者に加え、DV被害者、難民、ホームレス等々、15の就労弱者に対し、それを理由として採用の合否を決定せず、未来への意識を持って努力を続ける人の採用をするというものだ。
10年5月には、報道機関に向け「アイエスエフネットグループ 雇用創造宣言」をリリース。
これは、雇用、やりがい、待遇について宣言したもので、雇用については、20年までに1000名の「FD(Future Dream)メンバー」の雇用を創造するとした(FDメンバーとは、「未来の夢を実現するメンバー」という意味を込めたアイエスエフネットグループ内での障がい者の呼称)。
20大雇用の取り組みを始めた理由
現在、日本の障がい者人口はおよそ国民の6%の744万3000人。そのうち就労者数は約35万人。
働けるにもかかわらず働いていない障がい者は、障害年金などの社会保障に頼らざるを得ない。つまり税金で生活を維持している。一説によると、1人の障がい者に必要な税金は年間約400万円、40年間に必要な税金は2億円弱にもなる。
現在、増え続ける社会保障費を国民がどう負担していくのかが議論されているが、それは雇用創出と切っても切り離せない問題だろう。
さらに、ニート・フリーター、ワーキングプア、シニア、引きこもりを加えると、働けるのに働いていない人の総数は、2000万人を超えるといわれている。こうした人たちが働くことができれば、その経済的効果は誰が見ても明らかだろう。