2012年6月号掲載
日本企業をグローバル勝者にする経営戦略の授業
著者紹介
概要
最近倒産したコダックを尻目に、業績を伸ばす富士フイルム。あるいは、後追い企業を振り払い、世界に飛躍するファーストリテイリング…。グローバル競争が激化する中、企業の勝ち負けがはっきりつく時代になった。では、今日の勝ち組に共通する特質は何か? マッキンゼーで経営変革に取り組み、一橋大学で教鞭をとる著者が、その新たな成長戦略を解き明かす。
要約
「高品質+低価格」戦略
企業にとって大切なもの、それは成長である。では、どうすれば企業は持続的に成長できるのか。
マイケル・ポーターの3つの基本戦略は今も有効か?
企業の持続的な成長を実現する経営戦略を考える上で、まず確認しておきたいのが、ハーバード大学のマイケル・ポーター教授の競争戦略論だ。
ポーター教授は、『競争の戦略』で次の3つの基本戦略を示した。
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- ①コストリーダーシップ戦略(コスト戦略)
- ②差別化戦略
- ③市場集中戦略(ニッチ戦略)
コストリーダーシップ戦略(以下、コスト戦略)は低コスト化を実現することによって、差別化戦略は他社にない特徴のある価値を提供することによって、競争に勝つことを目指す。
市場集中戦略は、特定の分野に経営資源を集中することで競争に勝つことを目指す戦略である。ただ、特定分野に集中する場合でも、コストか差別化のどちらかに軸足を置くべきとされる。
すなわち、突き詰めれば、コスト戦略か差別化戦略かということになり、中途半端な立ち位置では競争に勝てない、と指摘している。
こうした戦略が今も有効であることは間違いない。ただ、市場がグローバル化した現在、その有効性は以前より低下している。
コスト戦略は、他社が追随してくると、安値競争という泥仕合に陥るおそれがある。
差別化戦略を追求し高機能を実現できたとしても、それが消費者に受け入れられるとは限らない。
「二兎追い戦略」が有効
3つの基本戦略の有効性が薄れてきているのだとしたら、新たな戦略を考える必要がある。
そもそも顧客は、価値が高く、かつコストが安いものを求めているはずだ。両方を実現してくれるものがあれば、それを購入するのではないか。つまり、両方を目指すことが新しい戦略になる。