2012年8月号掲載
ヘッジファンドマネージャーが説く次なる大難 2015年の食料危機
著者紹介
概要
穀物市場に長年関わってきたヘッジファンドマネージャーが、その経験を基に「日本の食の危機」を予見した、警告の書である。世界的な人口増加による穀物需要の増加、穀物市場への投資マネーの流入、あるいは日本の債務問題が招く急激な円安などにより、食料価格が暴騰し、食の安全が脅かされる ―― 。そんな危機のシナリオが明らかにされる。
要約
穀物が国家の命運を左右する
日本は、農産物の大半を輸入に頼っている。このような状況では、農産物が値上がりすると大きなダメージを負う。そして実は今、穀物価格は値上がりの傾向を見せ始めている。
しかも、穀物相場の動きを見ると、20世紀末までの価格変動と21世紀に入ってからの動きは根本的に違う。例えば、従来の価格上昇は不作の時に限られていたが、2006年以降は豊作が続いていたにもかかわらず、値段が上がっている。
また、従来は「小麦が不作だから小麦が値上がりした」という部分的な動きだった。だが、この頃から、全ての穀物が同時に上がり始めている。
世紀の境目に、何かが起きたとしか思えない。
「農業資源も有限だ」と気づいた
専門家の見方も、農産物や穀物の分野でパラダイムシフト(構造的変化)が起こったという点で一致している。その変化を一言でいえば「人々が農業資源も有限であると気づいた」ということだ。
例えば、農地。2008年に国際連合食糧農業機関がまとめた世界の農地面積は13億8000ヘクタールで、00年と比べて減少している。
それは、農業に使える水に限界があるためだ。農業に利用できる淡水も無尽蔵ではないのである。
人口増に生産が追いつかない!
需要面でも、構造的な変化が起きている。
その1つは、人口の増加だ。世界の人口は1998年に60億人を超え、2011年に70億人を突破した。
そして、人口増加のペースを大きく上回るペースで穀物需要が増えている。
これは新興国の経済成長が著しく、それらの国の食生活が急速に向上し、欧米化してきたからだ。