2013年6月号掲載
お金持ちに捨てられる日本 超増税社会を生き抜く知恵
著者紹介
概要
消費税のみならず、所得税や相続税の税率も引き上げられようとしている。これらの増税は、社会にどう影響するのか? 国際的に活躍する税理士が、海外の事例を織り交ぜつつ、増税社会のカラクリを解説。「このままの税制だと、富裕層は日本を見限る」と述べ、日本経済を良くするには富裕層を大事にし、彼らに投資や雇用を増やすように金を使わせるべき、と提案する。
要約
税と国家とお金持ち
富裕層への課税強化が進んでいる。
消費税増税は、低所得者層にはこたえる。そこで、低所得者層を納得させる意味で、富裕層にはもっと税負担をお願いするということである。
例えば、相続税は4800万円(相続人が3人の場合)の遺産からかかり、相続税や所得税(住民税10%を含む)の税率は最高で55%になる。
額に汗して働いても、自分の取り分より国の取り分の方が多くなる。所得に過半の税金をかけられ、税引き後のお金に、死ねばまた過半の相続税をかけられる。それではまるで罰金である ―― 。
富裕層にとっての日米格差は天国と地獄
米国のオバマ大統領が再選された。
オバマの公約の大きな1つは、年収40万ドル以上の富裕層への増税。ブッシュ減税を打ち切り、世帯年収45万ドル超、個人40万ドル超に対して、35%から39.6%に税率を引き上げた。
だが、日本の「所得税率+住民税率」が、自民、公明、民主の3党合意で55%に引き上げられることに比べれば、恵まれている。また、相続税率も最高35%から40%に引き上げるとしているが、日本では50%から55%に上げるとしている。
しかも、相続税率5%引き上げの見返りとして、5億円までは相続税がかからないとした米国に対し、日本は平均4800万円からかかることになる。
これが実現すれば、富裕層にとっての日米格差は天国と地獄である。
さらに言えば、法人税率は、日本は38%(復興特別法人税含む)だが、米国は民主党案は28%、共和党は25%に下げる、としている。
日本の増税理由は財政難だから、税金は取れるところから取るという従前の古典的方法、米国は財政難だから、景気刺激策として減税を実施し、消費や投資を活発にさせようとする。