2013年6月号掲載
ほどほど養生訓 実践編 こうすれば健康長寿になれる
著者紹介
概要
ストレスは体に悪い。熱中症の予防にはこまめな水分補給が必要。がん家系でなければ、あまり心配しなくてよい…。世間で信じられている「健康常識」は果たして本当なのか? 病気を予防するための研究に打ち込んできた医師が、常識の誤りを指摘し、簡単で長続きする健康術を指南する。また、無用な治療や検査を行う現代医療のあり方についても警鐘を鳴らす。
要約
「健康常識」をチェックしよう
私は長い間、大学勤務の医師として、病気を予防するための研究に打ち込んできた。
例えば、膨大な調査データをコンピューターで分析し、正しいかどうかを検証した。病気を予防するための調査研究は世界中にたくさんあるが、結論が正反対だったりすることもしばしばだ。しかしコンピューターを駆使すると、混沌とした中からも真実が見えてくるものだ。
私自身も、約2000名の健康な人を15年以上、追跡調査し、日本人ではどうなのか検証してきた。
これらのデータから、「健康常識」の間違いが見えてきた。例えば ――
睡眠は7時間以下で足りる
世の中には、不眠症で悩む人が多い。年齢が進むにつれ、眠れないことに悩む人が増えてくる。
それは、年を取るにつれ昼間の活動量が減り、若い頃に比べて睡眠の必要性が少なくてすむようになるからだ。
睡眠時間と寿命との関係を調べたデータが世界中にたくさんある。どのデータもほぼ同じ結論で、「最適な睡眠時間は?」という問いに対する答えは7時間。これよりも睡眠時間が長い人、あるいは短い人は、寿命が少し短いということになる。
私たちも、日本人を対象に睡眠時間と病気(動脈硬化症)との関係を調べたことがある。その結果、2つの重大な発見があった。
1つは、平均の睡眠時間が6時間の人で、最も病気が少なくなっていたこと。
もう1つは、睡眠時間が短過ぎる人より、長過ぎる人の方が病気になりやすいという事実だ。
長い時間、体を動かさないと、血液の循環が滞ってしまうのだ。人間の体は、絶えず動いていることで健康が保たれる、と覚えておくとよい。