2013年7月号掲載
ユダヤの「生き延びる智慧」に学べ 浮かれる日本への警鐘
著者紹介
概要
副題は「浮かれる日本への警鐘」。ユダヤ教に改宗してユダヤ人となった国際弁護士が、今またバブルの夢を追う日本に辛口で物申した書だ。著者によれば、アベノミクスは日本の財政を破綻させかねない。また、尖閣問題等に見るように、国際政治における戦略的嗅覚もない。そうした問題の数々を挙げ、日本が生き残るために学ぶべき、ユダヤ5000年の智慧を示す。
要約
ユダヤの教えは、生き抜く智慧
『ヘブライ聖書』(ユダヤ教の聖書)、『タルムード』(ユダヤ教の聖典)は、人が人生において直面するあらゆる問題・困難に対処するために身につけるべき知恵の宝庫である ―― 。
日本は今、重大な危機に直面している。世界的な経済危機・金融危機に加え、国内総生産に対する借金の割合は200%を超えている。
消費税増税にも、TPPにも、原発問題にも、民意を反映させることなく、ただ政争の具として事を進める政治家たちは全く当てにならない。
ユダヤ人の歴史は迫害と耐久の歴史である。あらゆる危難に際して、そこから逃れ、生き延びるヒントを与えてきたユダヤの教えは、現代日本人にも確かな活路を与えられるに違いない。
バベルの塔はなぜ崩れたのか?
ヘブライ聖書の創世記に登場するエピソードに、「バベルの塔の物語」がある。
人間が天にも届くような高い塔を築き始めたのを見た神が、人間の思い上がりに対して怒り、人々の言葉を混乱させて建設を中止させたというものだ。人間の傲慢さを神が戒めたというのが、この物語についての一般的に知られている解釈ではないだろうか。
これに対して、神が人々の言葉を混乱させた点を重視した別の解釈がある。
塔が建設される頃の人間社会は、誰もが1つの言葉を話し、1つの価値観に統一され、何の疑いもなしに「天まで届く塔」の建設に従事していた。
言い換えれば、誰もが中央の権力にひれ伏した全体主義的で中央集権的な世の中だった。
神はそのような人間の有り様を嫌い、「言葉を混乱させる」ことによって(これが世界中に様々な言語が存在するきっかけとされる)、人々の考えや価値観に多様性をもたらし、人をして個の尊厳と議論の大切さに目覚めさせたのだ。
疑うことも、考えることも、議論することもなしに、権力者の命令に盲従してバベルの塔の建設に勤しむ人々のイメージは、現在の日本の社会そのものではないだろうか?