2014年5月号掲載
リニア新幹線 巨大プロジェクトの「真実」
- 著者
- 出版社
- 発行日2014年3月19日
- 定価792円
- ページ数203ページ
※『TOPPOINT』にお申し込みいただき「月刊誌会員」にご登録いただくと、ご利用いただけます。
※最新号以前に掲載の要約をご覧いただくには、別途「月刊誌プラス会員」のお申し込みが必要です。
著者紹介
概要
早ければ2014年春にも工事が始まる、リニア中央新幹線。JR東海が進める、建設費9兆円超の巨大プロジェクトだが、人々の関心は薄く、計画の実態はほとんど知られていない。本書は、このリニア計画を、経済性、技術面、環境面等から徹底検証。超音速機コンコルドなど過去の失敗プロジェクトも引きつつ、計画が抱える問題点を指摘し、リニアの必要性を問う。
要約
リニア計画はなぜ生まれたのか
“夢の新幹線”といわれてきたリニア中央新幹線が、実験段階から実用段階に向けていよいよ動き出そうとしている。
しかし、世界のどこにもない超電導磁気浮上方式で、また建設費が約9兆円という壮大な計画にもかかわらず、海外はもとより国民の関心が低く、計画の実像については殆ど知らされていない。
*
2007年4月、バブル崩壊後、忘れ去られていたリニア構想が突然再登場した。JR東海が、自らリニア中央新幹線をつくる計画を発表したのだ。
東京―大阪間に、世界初の超電導磁気浮上式リニア鉄道を自社で2045年を目処に開業させるという、壮大な計画である。主な内容は、次の通り。
-
- ・走行速度は時速最高505km。
- ・所要時間は、東京―名古屋間40分、東京―大阪間67分。
- ・走行方式は鉄車輪もレールもない超電導磁気浮上方式のリニアとする。
- ・走行区間の大部分は地下40m以深の地下および山岳トンネルとする。
では、この計画を考え出したJR東海の目的、経営戦略上の狙いはどこにあるのだろうか。
それは、「世界一速い鉄道を実現し、世界の鉄道界をリードしたい」「これまでの鉄道にイノベーション(革新)を起こす」「そのため、これまで開発してきた未踏の新技術である超電導磁気浮上方式のリニアを中央新幹線で実用化する」ということにあるように思われる。
東海道新幹線は現在、最高時速270kmで運転されているが、すでにフランスのTGV、ドイツのICEなどに速度で後れをとっている。そのため、リニアを東京―大阪間で実現し、世界の鉄道のトップに立ちたいという心意気が読みとれる。
と同時に、これからの時代は時間価値が高まることが必至であるとの想定で、6000万人が住む首都圏―関西圏を短時間で結べば、巨大な都市圏が形成されるので、そのための大動脈をつくる価値は大いにある ―― という確信が読みとれる。
なぜリニア中央新幹線をつくるのか
いかなるプロジェクトであれ、必要なものは計画目的とそれを実現するための手段、この2つだ。