2014年6月号掲載
食と日本人の知恵
- 著者
- 出版社
- 発行日2002年1月16日
- 定価1,144円
- ページ数312ページ
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著者紹介
概要
春夏秋冬の四季がある、山紫水明の国日本では、独自の食文化が発達した。塩辛、佃煮、蕎麦、煎餅…。日本の食べ物は味はもちろん、香り、色、形、音までがおいしい。2013年12月には、和食(日本の食文化)がユネスコ無形文化遺産に登録された。本書では、食にまつわる日本人の知恵の数々を紹介。発酵学専攻の著者の蘊蓄は楽しく、読むほどに食欲をそそられる!
要約
驚くべき日本人の食の知恵
四方を海に囲まれた日本には、規則正しく春夏秋冬がめぐり、食べ物にもそれぞれに旬がある。
そのような恵まれた気候風土の中で育ってきた日本人は、独自の食文化をつくってきたが、その背景には、この民族の驚くべき知恵がある。
無駄も方便
牛蒡は日本人だけが食べる根菜である。
牛蒡は、難消化性多糖類の繊維素が主体であるので、食べても消化せず、栄養源にはならない。
ところが、牛蒡の繊維素は腸内を清掃し、お通じをよくする。また、繊維素は有益な腸内細菌を増殖させる場ともなるから、腸に侵入した腐敗菌などの増殖を抑えるとともに、そこで様々なビタミンを生合成する。さらに、繊維素には脂肪の分解やコレステロールの過剰を抑える効果もある。
日本には、このように栄養的には無駄な食べ物でありながら、実は貴重な価値を持つものが多い。
蒟蒻もそうだ。主成分が多糖類の一種マンナンで、人間はこの成分を消化吸収できないから、低カロリー食品の代表格とされている。その上、マンナンは水で膨れるため、蒟蒻の97%が水分。
その性質を利用して、古来「砂払い」といって、腸管の掃除役に重宝した。大掃除の後、体に吸い込んだ埃を出そうと、蒟蒻を食べさせられたものだ。
塩辛にみる日本人の発想
日本は島国のため、昔から魚介類が豊富だった。その結果、魚を実に多く食べる民族となった。
魚の扱いに慣れた日本人は、バラエティーに富んだ魚料理や、魚介類の加工法をあみだしたが、その中でも傑作の1つは、塩辛であろう。塩辛づくりには、日本人の貪欲なまでの魚の利用法と美味追求心から生まれた知恵が盛り込まれている。
日本人は昔から、食に対しての無駄を極力避けてきた。だから、魚の腸にうま味を出してくれる何物かがあると知ると、丹念に取り出し、きめ細やかな風味を持った嗜好物に変える工夫を模索した。その結果、様々な塩辛をあみだしたのである。