2016年5月号掲載
養生訓
著者紹介
概要
江戸時代半ば、1713年刊行の『養生訓』は、300年以上も読み継がれてきた超ロングセラーだ。著者の益軒は、体を粗末にして命を縮めるのは、天地や親に対する不孝の極み、愚の骨頂だと喝破。人生で大切なのは健康だとし、「養生の術」を説く。この、健康に暮らすための知恵が詰まった名著を、読みやすい現代語訳で紹介する。
要約
養生の術
人の体は父母から授かったもので、その源をたどると天地まで行き着く。
天地の賜物であり、父母がこの世に残してくれた体なのだから、ゆめゆめ粗末に扱ってはならず、天寿をまっとうできるよう生きないといけない。
身命(体と命)を単なる私物とみなして、食欲や色欲を抑制できずに暴走し、その結果、「元気」(万物の根源となる精気)を失って病を発症し、身命を早く失うようなことは、天地や父母に対する不孝の極みであり、愚の骨頂である。
人として生まれ、この世に生きるからには、誰しも、一途に父母や天地に孝をつくし、人倫の道を重んじて、義理を大切にし、できることなら幸せを感じながら長生きして、喜びに満ちあふれる楽しい毎日を送りたいと願っているはずだ。
そのような素晴らしい人生を送りたいと望むのであれば、「養生の術」というものをよく学んで、おのれの体を健康に保たなければならない。それが、人生で成すべき最も重要なことである。
「内欲」・「外邪」
養生の術でまずやるべきことは、体に危害を及ぼすものを取り除くことだ。体に危害を与えるものとは、「内欲」(体内から湧き上がる欲望)と「外邪」(体外から体内へと忍び込む病邪)である。
内欲とは、飲食欲、性欲、睡眠欲、しゃべりまくりたい欲、そして喜・怒・憂・思・悲・恐・驚の「七情の欲」をいう。
外邪とは、自然界を支配する4つの気(目に見えないエネルギー)で、風・寒・暑・湿をいう。
内欲を我慢して少なくし、外邪は警戒して防ぐ。そうすれば元気がなくなることはない。
内欲をこらえるには
「養生の道」の基本は、内欲をこらえることである。この基本を守ってさえいれば、全身に元気がみなぎり、外邪をはね返すことができる。
内欲をこらえる上で大事なことは、飲食をほどほどにし、過食しないようにすることだ。脾胃(胃や腸)に危害を与えて病気を引き起こすような食べものは、口にしてはいけないのである。