2014年9月号掲載
競争優位の終焉 市場の変化に合わせて、戦略を動かし続ける
Original Title :The end of competitive advantage:how to keep your strategy moving as fast as your business
著者紹介
概要
本書のオビに曰く、「ポーターの理論だけでは、生き残れない」。今日の変化の激しい競争環境においては、マイケル・ポーターが説いた「5つの競争要因」等の理論に従い、「持続する競争優位」の確立にこだわるのは危険だ、と著者はいう。代わって提示するのが、「一時的な競争優位」に基づく戦略である。それは、束の間の好機を迅速につかみ、確実に利用する方法だ!
要約
競争優位の終焉
あなたが取締役会や幹部会議に参加したとする。そこで耳にする多くの戦略的思考は、どこか別の時代に、その時代のために構想された概念やフレームワークに基づいている可能性が高い。
その手の有力理論、例えばファイブフォース(5つの競争要因)分析、コア・コンピタンス(得意分野)は、どれも極めて重要なものだ。多くの戦略が、今もそうした理論に則っている。
だが、現在用いられている戦略のフレームワークやツールはほぼすべて、ある1つの考えに支配されている。それは、戦略の目的は「持続する競争優位の確立」だというものである。
この考え方は戦略の最も基本的なコンセプトだ。ところが、多くの企業にとって、この考えはもはやふさわしいものではなくなってきている。
本書で私は、「持続する競争優位」という概念に基づく戦略論を放棄する必要があると訴える。
代わって、「一時的な競争優位」に基づく戦略について展望する。不安定で不確実な環境で勝つには、経営陣は束の間の好機を迅速につかみ、かつ確実に利用する方法を学ばねばならない。
その戦略はもう古い
私が戦略研究の分野でキャリアを歩み始めた頃、金科玉条のごとき、2つの基本的想定があった。
1つは、「業界が最も重要な枠組みだ」ということ。業界はそこそこ安定しているとされていたので、業界の動向を見極め、戦略を構築する分析能力を備えれば、それなりの報酬を得られた。
もう1つは、「いったん確立された優位性は持続する」ということ。だが、多くの企業にとり、もはや世界とはそういう場所ではない。優位性が瞬く間に模倣され、技術革新が起き、顧客が他の選択肢を探す、という状況に直面している。
どこで戦うか:業界ではなくアリーナで
従って、今日の戦略は新たな想定に基づく必要がある。
私たちは何より、業界内の競争が最大の脅威だという想定を変えなければならない。