2015年1月号掲載
リスク・テイカーズ 相場を動かす8人のカリスマ投資家
著者紹介
概要
ウォーレン・バフェットをはじめ、投資の世界には“カリスマ投資家”がいる。彼らは強い信念を持ち、リスクを恐れず市場と向き合い、巨額の利益を得る。発する言葉は、絶大な力を帯びて拡散し、市場を揺さぶる。そんな歴戦の猛者たちの考え方、成功の秘密に、日経新聞証券部記者が迫った。アベノミクスの行方など、私たち日本人にとって気になる話も収める。
要約
相場を動かすカリスマ投資家
米国では、自らの相場観で勝ち残ってきたカリスマ投資家が尊敬を集める。ハーバード大学やコロンビア大学を卒業した優秀な若者たちが、将来、投資家になることを夢として語る国でもある。
米国には「投資の沃野」とも呼ぶべき世界が広がっている。
カリスマ投資家たちの生き方や運用哲学の深きに降り立てれば、バブルの生成と崩壊を繰り返しながらも、今なお世界の中心に君臨する米国の金融の本質が見えてくるかもしれない ―― 。
大物アクティビスト:ダニエル・ローブ
世界随一のカジノ都市ラスベガス。最高級ホテル「ベラージオ」に、2013年5月、2000人近くのヘッジファンド業界の面々が集まった。
この場で最も注目を集めた人物の1人が、サード・ポイントの創業者ダニエル・ローブだった。
140億ドルという巨額の資金を運用するファンド業界の旗手であり、経営陣に改革を突きつける「物言う株主(アクティビスト)」の顔も持つ。
ローブが壇上に上がって、こう言い放った。
「日本株の上げ相場にはまだまだ先がある」
日銀は未曾有の金融緩和に踏み切り、これからも円相場は水準を切り下げるはずだ。円安と株高に賭ける投資戦略は今後も有効だと力説した。
会合を終えたローブは東京へ向かい、ソニーの平井一夫社長と会った。この場でソニー株の約6%を保有していると明かし、平井に映画・音楽などエンターテインメント部門の一部上場を柱とした経営改善策を盛り込んだ書簡を手渡した。
ローブは官房長官の菅義偉とも会談した。日銀や財務省も訪れ、アベノミクスの支持者であることなどを熱弁した。彼は賢い投資家だ。政府や役所の要人にも会い、サード・ポイントが日本の敵ではないことをアピールする。徐々に外堀を埋めながら、ソニーに経営改革を迫った。