2019年2月号掲載
市場サイクルを極める 勝率を高める王道の投資哲学
Original Title :Mastering the Market Cycle
著者紹介
概要
ウォーレン・バフェットも一目置くという、世界的な投資家ハワード・マークス。氏の手に成るロングセラー、『投資で一番大切な20の教え』で論じられた要素のうち、最も重要な「市場サイクル」にスポットを当てた書である。サイクルの重要性、性質、種類、対処の仕方等々、“勝率を高める王道の投資哲学”が披露される。
要約
なぜ「サイクル」を研究するのか?
我々が生きる世界には、繰り返し生じては、行動や生活に影響を及ぼすパターンや出来事がある。
「サイクル」と呼ばれるもの
例えば、冬は夏よりも寒く、雪が降りやすい。だから、人は冬にスキー旅行を計画する。
大多数の人は通常の周期的なパターンに従って活動し、日々の生活を過ごしやすくしている。
経済や企業や市場も、パターンに従って動く。そうしたパターンの中には、「サイクル」と呼ばれるものがある。サイクルは自然発生的な現象に起因するが、人間の心理の浮き沈みや、その結果生じた人間の行動に端を発する場合もある。
サイクルを見極めて、未来に備える
優れた投資家は、サイクルに注意を向けている。過去にあったパターンが繰り返されている様子はないかと気にかけ、問題とすべきサイクルのどこに今、自分が位置しているのかを感じ取る。
こうした資質を持つ優れた投資家は、次のように自問自答し、有意義な判断を下すことができる。
- ・今、サイクルの上昇期の入口に近づいているのか、それとも終盤にあるのか?
- ・あるサイクルで、しばらく上昇期が続いている場合、すでに危険な領域に到達しているのか?
- ・投資家の行動を駆り立てているのは強欲か、それとも恐怖か?
- ・投資家の姿勢は適度にリスク回避的か、それとも無謀なほどリスクに寛容か?
- ・サイクルに沿った流れの結果、相場は過熱しているか、冷え込んでいるか?
- ・これらの点から判断されるサイクル内での現在位置においては、防御性を重視すべきか、積極性を重視すべきか?
こうした要素に目を向けることで、優れた投資家は勝ち目を理解し、負ける回数よりも勝つ回数を多くできる。重要なのは、これらはどれも現在の状況の観察を基に判断できるという点だ。
現況を見極めれば、未来を予測する能力に頼らずとも未来に備える方法がわかるのである。
サイクルの性質
私の会社の顧客は、私に会うと、たいてい世界や市場の情勢をどう見るべきか、と尋ねる。
そんな時、私は決まって次のような図を書く。