2015年1月号掲載
経営の失敗学 ビジネスの成功確率を上げる
著者紹介
概要
「○○社はこうして成功した!」「××の成功法則」。こんな文言をビジネス書ではよく目にする。だが、経営コンサルタントとして数々のビジネスを見てきた著者は、成功例より、失敗に学ぶことが重要だという。企業の成功は各社各様で、単に真似ても成功しない。一方、失敗はパターン化できる。それを踏まえることで、ビジネスは結果として成功に近づく、と。
要約
ビジネスは失敗する運命にある
ビジネスとは、そもそも失敗する確率が圧倒的に高いものである。
例えば、アップルは次々に大ヒット商品を出しているように見えるが、失敗も山のように多い。
1993年に発売された世界初の携帯情報端末「ニュートン」は5年で幕を閉じた。ゲーム機「ピピン」を96年に発売したが、2年弱で失敗。2000年発売のパソコン「キューブ」は、ニューヨーク近代美術館の永久コレクションになるほどの美しいデザインだったが、全く売れなかった。
こうした失敗の原因はどこにあるのだろうか。ビジネスには、2つのジレンマが存在する。
- ①同質化による失敗:他社と同じこと、あるいは、今までの自社と同じことをやっていては成功しない
他社と同じものしか提供できない企業は、顧客から見て存在理由がない。A社にしか提供できないものがあるからこそ、A社から買うのだ。「その他大勢組」は次第に力を失っていく。
日本の家電メーカーは、家電系のソニーやパナソニック、重電系の日立や東芝、通信系の富士通とNEC等、それぞれ特色のあるバックグラウンドを持つにもかかわらず、どの企業も一様にテレビ、冷蔵庫など似たようなラインナップの商品を出している。これでは、誰も儲かるはずがない。
また、今までの自社と同じことをやっている場合、やがて競合が現れ、市場シェアを失う。
- ②異質化による失敗:他社と違うこと、あるいは、今までの自社と違うことをやれば成功しない
ファーストリテイリングは2002年に、野菜の通販ビジネスを始めた。だが、アパレルと違い野菜は生鮮食品なので計画生産したり、在庫として保管できない。こうした誤算のため、結局、わずか1年半で事業から撤退することになった。
これは、自社がこれまでの事業とは違うこと、他社がやらないことに挑戦して失敗した例である。
要するに、同質化しても異質化しても失敗しがちであるということだ。このように見ていくと、多くのビジネスが失敗するのは当然のことなのだ。