2015年5月号掲載
パーソナルデータの衝撃 一生を丸裸にされる「情報経済」が始まった
著者紹介
概要
今日、インターネットや小売店の会員カードの利用などで、私たちは無意識のうちに関心事、友人、購買履歴といった「パーソナルデータ(個人に関する情報)」を企業に差し出している。“今世紀最大の経営資源”といわれる個人情報。これを企業はどう利用しているのか?消費者が留意すべきこととは? パーソナルデータにおける先端事例、問題点等について説く。
要約
パーソナルデータは「新しい石油」
「我々はあなたがどこにいるか知っている。どこにいたかも知っている。あなたが考えていることもおおよそ把握している」
2010年10月、当時グーグルのCEOであったエリック・シュミット氏は、このように語っている。
確かに検索履歴を分析すれば、個人の関心事、欲しいものがおおよそ把握できる。グーグルが開発したアンドロイド搭載のスマートフォンの場合、同社による位置情報の収集を許可すれば、自分の現在地が定期的にグーグルに送信される。この履歴を遡れば、過去30日間の足取りがわかる。
フェイスブックは、我々の交友関係を把握している。交友関係に合わせて、毎日の投稿内容なども分析すれば、グーグル以上に我々の趣味や関心事を把握していても不思議ではない。
両社が我々のことを知ろうとするのは、興味を引く広告を配信するためだ。グーグル約590億ドル、フェイスブック約115億ドル、我々のパーソナルデータから稼ぎ出す売上は途方もない金額だ。
これらのインターネットサービスが、我々の生活を便利なものにしてくれていることは確かだ。
一方、利便性と引き換えに、我々は位置情報、関心事、交友関係、購買履歴などいわゆる「パーソナルデータ」をインターネット企業に差し出していることも心に留めておくべきだろう。
無断で視聴情報を収集したスマートテレビ
パーソナルデータの収集に躍起となっているのは、ネット企業だけではない。
2013年11月、英国に住むある男性が、おかしなことに気がついた。所有する韓国LG社製のスマートテレビ(従来のテレビにパソコンやインターネットの機能を加えたもの)が、チャンネルを変えるたびに端末IDとチャンネル名を外部のLGのサーバーに送信していたのだ。
不審に思った彼は、テレビのシステム設定画面を確認した。すると、「視聴情報の収集」というオプションが初期設定で“オン”になっていた。そう、メーカーから出荷された状態では、消費者がどのチャンネルを視聴したかという情報がLGに筒抜けになる設定となっていたのだ。
日本も例外ではない
このように、現代社会においては、我々の行動・生活のほぼすべてがデジタルデータとして記録され、企業に収集されうるといってよい。