2015年7月号掲載
2023年の中国 習近平政権後、中国と世界はどうなっているか?
著者紹介
概要
習近平が中国の最高指導者となって2年。中国の官僚・経済人に深いパイプを持ち、10年以上彼を取材してきたジャーナリストが、習政権の構想と戦略の全体像を明らかにした。名目GDPでは、世界一になる日も近い中国。2023年、習近平の政権退任時、同国はどんな国になっているのか、経済政策、国際金融戦略、政治・社会システム等の観点から徹底予測する。
要約
習近平が唱える「中国の夢」
中国が主導する「アジアインフラ投資銀行」(AIIB)の創立メンバーの募集が、2015年3月に締切りを迎えた。
予想をはるかに超える51の国や地域が参加を表明し、英国や韓国など、米国から参加を牽制されていた親米国までが参加することとなった。
この動きは、米国主導の国際金融体制が今後大きく転換せざるを得なくなることを、世界の多くの国々が認識していることを示すものだ。
さらに、習近平政権が推進する「シルクロード経済圏」構想にも、注目が集まっている。中国が400億ドル(約4兆5800億円)の基金を創設し、陸上と海上の2つのシルクロードの周辺地域に鉄道や通信網などのインフラ整備を行うものだ。
これにより、中国は欧州連合(EU)に繋がる地域への影響力を強めることになる。また、中東や中央アジアからの資源輸入のルートも万全となる。
中国経済が米国を超え、“世界一”になる日
中国のGDP(国内総生産)は、2023年には米国を追い越すと試算されている。
日本のエコノミストの中には「中国経済はバブルが崩壊し、GDPが米国を抜く日はない」と予測する者もいるが、世界のほとんどの予測機関が「衰退しつつある米経済に代わって、中国が世界一の経済体になる」と分析している。
さらに、2050年には、中国の世界全体でのGDPシェアは30%に達し、米国は18%に縮小、日本は3%になるという衝撃的な予測もある。
実は中国のGDPは、19世紀前半まで世界の30%以上を占め世界一だったが、産業革命に乗り遅れ、没落した歴史がある。まさに2世紀の時を経て、中国のリベンジが達成されることになる。
習近平政権のタイムテーブル
習近平が構想するシルクロードの再建は、21世紀の欧州、アフリカとアジアをつなぐ陸海の物流の大輸送路を構築し、中国を21世紀の世界経済の中心に押し上げることを意味する。
また、AIIBなどの創設は、中国を世界資本市場の新リーダーとし、元を国際通貨化し、世界の経済・政治地図を変えようという戦略である。