2015年8月号掲載
日本が世界地図から消滅しないための戦略 用意周到な大国 用意周到でない日本
著者紹介
概要
人口減少、周辺国家との軋轢、技術革新への対応の遅れ。かつて長期の繁栄を謳歌したカルタゴやベネチアは、こうした課題に対応できず滅亡した。同様の問題を抱える日本も、下手をすれば同じ道を歩みかねない!? 「国家存亡のカギは『用意周到』にあり」。この視点の下、数千年の人類の歴史において、消滅した国家の事例を検証し、そこから学ぶべきことを示す。
要約
今、日本が直面している危機
人類の歴史は、国家興亡の歴史といっても過言ではない。
600年以上繁栄した古代のカルタゴも、1000年以上、地中海を支配したベネチアも消滅した。
世界最長の歴史を誇る日本が、カルタゴ、ベネチアにならない保証はない。様々な資料を駆使して、日本が直面している危機を探る。
カルタゴの歴史の教訓
紀元前10世紀前後、地球で最も繁栄していた地域は地中海沿岸だった。
そして、地中海の南側のアフリカ大陸北岸で発展したのがカルタゴで、北側のヨーロッパ大陸南岸で発展したのがローマである。
この両雄が激突したのがポエニ戦争であり、第1次、第2次、第3次と130年以上にわたる戦争の結果、カルタゴは地上から消滅した ―― 。
地中海の南側半分を支配するほどの勢力であったカルタゴが敗れた原因を解明すると、3つの重大な教訓が得られる。
第1の教訓は、「傭兵に依存したこと」である。
海洋国家なので海軍は自国民中心で構成されていたが、陸軍は大半が傭兵だった。傭兵の目的は金銭であり、祖国のためという熱意はない。
第2の教訓は、「経済至上主義の弱点」である。
カルタゴは豊富な農産物と最高の造船技術によって交易を発展させ、経済大国を目指した。この目標の弱点について、ある史家は言う。「カルタゴの歴史は文明の浅薄さと脆弱さを示している。彼らは富の獲得だけに血道をあげ、政治的、文化的、倫理的な進歩を目指す努力をしなかった」。