2015年9月号掲載
日本人の意識構造 風土・歴史・社会
- 著者
- 出版社
- 発行日1972年10月25日
- 定価880円
- ページ数237ページ
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著者紹介
概要
欧米文化との比較を通じ、日本を論じた本は多い。その中にあって、ユニークな視点から日本人像を描いた書である。日本人は子どもを危険から守る時、前に抱きかかえ、危険なものに背を向けうずくまる ―― 。こうした日常の何気ない動作を生む深層意識に分け入り、日本人の意識構造の特質を浮かび上がらせていく。独特の“会田史観”が詰まった、ロングセラー。
要約
日本人の「うつ向き」姿勢
あるアメリカ人が、日本人について次のような論文を書いている。
「日本人というのは、不思議な人種である。私たちが、日本人の戦う姿勢というものを頭の中に思い浮かべた時、必ずそれはうつ向きの姿をとって目にうつる」
日本人の闘争姿勢は、確かに極端なうつ向きだ。例えば、突撃でも、日本人ほどうつ向いて銃を構え、伏せるように突っ込んでいく民族はいない。
この論文は、さらにいう。
「こういう日本人が子どもを守る時の姿勢はおもしろい。向こうから、熊なり自動車なりが襲いかかってきたとする。その時の日本人は、私たちの仲間では女性しかやらない、しかも、全部の女性がやるとは限っていない姿勢を、男も女も、年寄りも若い者も、全員がとる。それは、子どもを対面するように前に抱き寄せ、抱きしめて、熊とか自動車の方にお尻を向け、うずくまる防御態勢だ。これが日本人の姿勢だ」と。
それならアメリカ人は、そんな時どういう動作をするのか。
ほとんど全部は、日本人とは逆さまの姿勢をとる。まず子どもを後ろへはねのける。そして敵に直面し、両手を広げて「仁王立ち」になる。日本人とは正反対である。
日本人と欧米人のこの姿勢の相違は、大きな意味を含んでいると私は考える。
私たちの、家庭を守るとか、職場を守る、あるいは国を守るといった守備姿勢というものの精神的な構造は、それを図象化すると、背を外部に向け、うつ向き、内側を向いて守るという形になるのではないか。
ここから日本人独特な物の考え方が、とりわけ発想の方向が出てくるはずである。
どうも、敵というものは後ろからやってくる。あるいはまた、自分も後ろから攻めた方がいいのだという観念が、日本人はとりわけ強いのではないかと思う。