2016年1月号掲載
LFP 企業が「並外れた敏捷性」を手に入れる10の原則
著者紹介
概要
「LFP」(ライト・フットプリント)とは、「足跡が残らないほど素早く身軽な経営」のこと。経営環境が目まぐるしく変化する今日、意思決定、情報伝達、実行の遅れは企業にとって致命傷となる。そんな現代を勝ち抜く、新しい経営モデルである。具体的な事例も交え、いかにしてLFPを行う企業へと“変身”させるかが説かれる。
要約
未知なる経営環境
近年、欧米の経営者の間で、ある言葉が話題になっている。それは「VUCA(ブカ)」という言葉だ。
VUCAとは、次の4つの単語の頭文字からとった略語で、世界を取り巻く環境の特徴を指す。
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- ・Volatility(不安定性)
- ・Uncertainty(不確実性)
- ・Complexity(複雑性)
- ・Ambiguity(曖昧模糊)
つまり、私たちは「不安定で変化が激しく、先が読めず不確実性が高く、かつ様々な要素が複雑に絡み合い、きわめて不明確で不透明な環境」の中で生きているのである。
実際、企業を取り巻く環境はまさにVUCAそのものである。
これまでにも企業は大きな環境変化に何度も晒されてきた。だが、今私たちが直面している環境変化は、従来とは全く異なる未知なるものだ。
これまで私たちが体験してきた環境変化は、一時的な不安定だった。その影響は一時的、単発的であり、やがて新たな安定へと落ち着いていった。
VUCAという経営環境の最大の特徴は、「安定が期待できない」ということである。企業は常に様々な変化に晒され続け、不安定であることが常態化している。飛行機にたとえれば、乱気流が常態化する中で、私たちは操縦桿を握り続けなければならないのである。
予測不能なグローバル経済
VUCAを加速させている要素は1つではない。様々な要素が複雑に絡み合い、乱気流が常態化している。
マクロ的にみれば、経済のグローバル化の進展によって、ある国で起きた事象が瞬く間に他国に波及する。例えば、リーマンショックの引き金となった米国のサブプライム問題の影響は瞬く間に世界に広がり、世界同時不況の様相を呈した。
地政学上のリスクも増大している。ウクライナや中東における武力衝突、アラブ諸国の政情不安、中国による東シナ海への影響力の拡大とそれに伴う周辺国との軋轢など、火種は世界中のいたるところに存在する。ある政治学者は、「これほど多様で複雑に絡み合う地政学的リスクを人類はこれまで経験したことはない」と述べている。
加速するイノベーションのインパクト
企業の活動も、VUCAを加速させている。