2016年1月号掲載

中韓産業スパイ

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著者紹介

概要

日本は、産業スパイの“天国”だ! 2007年にはデンソーの中国国籍の元社員が社内情報を持ち出し、12年には新日鉄住金のOBが韓国企業に情報を洩らすなど、日本の先端技術の流出が止まらない。日本企業は中国・韓国の産業スパイから会社を守るために何をすべきか。彼らの手口や対抗策について、日経の専門記者が詳述する。

要約

産業スパイ天国・日本

 2012年、日本において、産業スパイ問題が突如として脚光を浴びた。新日本製鉄(現新日鉄住金)が「特殊鋼板の製造技術を盗まれた」として、自社のOB技術者と韓国の鉄鋼メーカー、ポスコを訴えたのだ。

 1990年前後に退職した複数のOBが長年にわたり新日鉄の秘密をポスコに流し続け、ポスコは、その情報を利用して技術力を引き上げたという。

 なぜ、新日鉄のOB技術者は産業スパイと言われかねない行為に及んだのか。実行犯の「声」が、雑誌で報じられた。

 「新日鉄が技術者に報いることは少なかった。…技術者が発明した特許に会社が払った対価は、1件あたり1000~1500円に過ぎなかった」

 「30年以上、新日鉄で鋼板技術の研究開発に従事した。しかしある日、会社から『明日から出てこなくていい』とリストラを示唆された」

 こうした言葉を聞くと、外国企業に転じたり、情報を提供したりした背景には、「心の隙間」があったことがうかがわれる。「失われた20年」の中で、競争力を失った日本企業がリストラに踏み切り、会社の理念が失われたり、転職を迫られたりしたことがきっかけではないか。

 そうしたタイミングで韓国や中国の企業は、日本から技術者とノウハウを取り込んでいったのだ。

産業スパイに対して無防備な日本企業

 産業スパイに対して日本の企業がいかに無防備かを示した事件の1つが、2007年に大手自動車部品メーカー、デンソーで起こった中国国籍の元社員による社内情報の持ち出し事件だ。

 A容疑者は1986年に中国の大学を卒業後、ミサイルやロケットを開発・製造する中国企業に就職した。1990年に来日し、2001年にデンソーに転職。2007年から材料技術部の係長職として、潤滑や金属摩耗の解析に携わる。さらに日本の自動車関連企業に所属する中国籍のエンジニアや留学生らが所属する団体の副会長も務めていた。

 このような経歴をもつ中国籍の人物を簡単に入社させただけでなく、社内の秘密情報にアクセスできる職務に就かせていたことは、ずさんな情報管理体制だったと非難されても仕方がない。

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